著作『イスラーム世界の社会秩序 もうひとつの「市場と公正」』

自著解題:『イスラーム世界の社会秩序』(一橋大学名誉教授 加藤博)(3)

1.関係性と社会秩序
2.iCardbookスタイルでの出版
3.著作『イスラーム世界の社会秩序 もうひとつの「市場と公正」』
4.もうひとつの市場経済の道
5.イスラーム経済における市場と公正
6.関係性のなかのイスラーム経済

(本稿は加藤博氏が自著の「解題」を信州イスラーム世界勉強会HP へ寄稿したもの。執筆者の加藤博氏と勉強会主催者の板垣雄三氏のご了解のもと転載しています。)

 


著作『イスラーム世界の社会秩序 もうひとつの「市場と公正」』

以上、どういう経緯から、私がiCardbookスタイルの本を出版するに至ったかを紹介しました。そこで、次は、本の内容の紹介です。本のタイトルは、『イスラーム世界の社会秩序 もうひとつの「市場と公正」』で、「理論編」「歴史編」「基本概念・基礎用語編」の三巻から構成されています。それぞれの巻の執筆趣旨は、以下(URL)において、本の出版元である詩想舎の神宮司信也氏が「物語風な作品紹介・説明」というタイトルで語ってくれています。理屈っぽい研究者の文章とは違う、平易な文章で書かれていますので、それを読んでみてください。

 Vol.1 イスラーム経済社会の構造(理論編)
 https://society-zero.com/icard/013/index.html
 Vol.2 市場経済における「イスラームの道」(歴史編)
 https://society-zero.com/icard/014/index.html
 Vol.3 基本概念・基礎用語編
 https://society-zero.com/icard/015/index.html

ところで、このタイトルも、本の出版スタイルと同じく、神宮司氏の提案にかかるものです。私はこれまで、自発的に研究をまとめようと思った本を除けば、原則、執筆依頼者が提案してきたタイトルに手を加えず、そのままで、ものを書いてきました。それがうまくいったかどうかはともかく、できるだけ執筆依頼の趣旨に答えたいと思ってきたからです。今回の本作成も同じです。

そこで、本の内容の解題も、本の出版スタイルの新奇性に見合う形で、従来とは異なるスタイルで話そうと思います。それは、本の内容を目次構成に沿って解説していくのではなく、本の内容が本のタイトルにどのように反映しているかを示すことです。

この本は、先に述べたようにカードの集積からなっており、執筆者、つまり私の考えは三巻のいたるところに短文のカードとしてちりばめられています。そのため、どのカードから読み始め、それをどのカードと結びつけ、どのような新たなアイデアや結論を導き出すかは、読者に任せられています。

しかし、そうはいっても、本のタイトルは抽象的な単語からなっています。そのため、タイトルとして配列された抽象的な単語に命を吹き込むには、触媒が必要です。ここでは、この触媒として、各巻のそれぞれの冒頭に置かれた三つのエピグラム(短い文章)を取り上げましょう。これらもまた神宮司氏が用意してくれたものですが、経済学者シュンペーター(1883-1950)、中世イスラーム世界の法学者イブン・タイミーヤ(1263-1328)、哲学者ウィトゲンシュタイン(1889-1951)の短文です。

偶然ですが、このエピグラムの三人の作者は私が好きな思想家であり、引用された文章には、私が本のなかで伝えたいと思ったメッセージが含まれているように思いました。


 

■関連URL

・[はじめに]Vol.1 イスラーム経済社会の構造(理論編) | iCardbook|知の旅人に https://society-zero.com/icard/islum1_pre
・[はじめに]Vol.2 市場経済における「イスラームの道」(歴史編) | iCardbook|知の旅人に https://society-zero.com/icard/islum2_pre

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1.関係性と社会秩序
2.iCardbookスタイルでの出版
3.著作『イスラーム世界の社会秩序 もうひとつの「市場と公正」』
4.もうひとつの市場経済の道
5.イスラーム経済における市場と公正
6.関係性のなかのイスラーム経済