イスラームに生まれた市場と公正の仕組みとは｜参考文献リスト

◎これは『イスラーム世界の社会秩序　もうひとつの「市場と公正」（加藤博）』の参考文献（書籍）を、章説明文の紹介とともに章別にリスト化したものです。

『イスラーム世界の社会秩序　もうひとつの「市場と公正」』は全三巻で構成されていて、その第二巻目です。
　Vol.1　イスラーム経済社会の構造（理論編）
　Vol.2　市場経済における「イスラームの道」（歴史編）
　Vol.3　基本概念・基礎用語編

■章説明文の紹介　第一章：イスラーム経済は市場経済

第１章　イスラーム経済は市場経済

イスラーム経済は、市場経済であった（第一巻『イスラーム経済の基本構造（理論編）』を参照）。

そして、それはイスラーム世界だからこそ生まれ得た経済のシステムであった。

そこで、まず、イスラーム世界とはどのような世界であったのかを説明し、次いで、なぜそこで展開したイスラーム経済を市場経済として取り上げるかの理由を解説しよう。

第１節　イスラーム世界の成立と展開

スラーム世界は、厳密に定義された空間ではない。

通常、誰もが認めるイスラーム世界の定義は、イスラームを理念とした政治主体に支配されたか、そうでなくとも、イスラームを核とした文明に大きな影響をうけた空間というものである。

とりわけ、イスラームを理念とした政治主体に支配された空間をイスラーム世界と呼ぶことには、異論はないであろう。

それでは、イスラーム世界で展開された政治とは、どのようなものであったのか。

第２節　なぜ市場経済としてイスラーム経済を取り上げるのか

本書では、イスラーム経済史を市場の発展の歴史として叙述する。

しかし、一般の日本人にとって、イスラームと市場経済とは、にわかに結びつかないであろう。

そこで、なぜ本書で市場経済を取り上げるかを説明したい。

■章説明文の紹介　第二章：イスラーム世界の社会経済秩序

第２章　イスラーム世界の社会経済秩序

イスラーム世界の社会は聖法（シャリーア）、つまりイスラーム法によって秩序立てられていた。

そのなかで、イスラーム経済は、ポランニーの言葉に倣えば、「法（イスラーム法）に埋め込まれた経済」であった。つまり、経済に先立って、聖法（シャリーア）があった。

本章では、イスラーム法に基づく社会経済秩序がどのようなものであるかを論じる。

第１節　イスラームの秩序観

イスラームの世界観では、神の絶対的な唯一性を前提に、神による調和的な秩序をもつ宇宙の創造が念頭に置かれる。

そして、この秩序観は、タドビールという概念に反映している。タドビールというアラビア語は、「経営」と訳され、ある目的の実現のために万全の注意を払うことを意味する。

こうして、この概念のもとに、国家、都市、会社、家族など、どのような分野の、またどのような規模の組織であれ、その組織の目的を実現するため、有効に資源、とりわけ人間が選択され、活用されることになる。

第２節　イスラーム経済における公正と市場

市場監督官（ムフタシブ）制度は、イスラーム世界が市場を中心に秩序立てられた社会であったことを示している。

イスラーム世界の政治当局も、商取引がなされる空間である市場を公共空間として、その維持・管理に努めた。

第３節　公正価格と「神の価格」

イスラームでは、政治はできるだけ経済、とりわけ課税に対して中立であるべきだと考えられた。そのため、物価も基本的には市場の動向によって決定されるとされた。

しかし、市場における投機的な動向は避けえない。そこで、政治は、社会経済秩序を守るため、社会福祉、社会正義の観点から市場に関与した。