高邁な自己実現ではなく、その時々の「動物的」な欲求を満たすことで事足れりとする態度は、人間的「自由」を確保するための一つの手段ととらえるべきである。
それはちょうど、かつてヘーゲルが指摘したように、絶対的な専制権力と身分秩序の苦しみから逃れるために、一切の形あるものの「断念」をもって内的「自由」を確保しようとした、古代インド思想に似た思考形態である。
■参考文献
『法の哲学』 §5 ゲオルク・ヴィルヘルム・フリードリヒ・ヘーゲル 原著一八二一年
『古代インドの思想——自然・文明・宗教』 山下 博司 二〇一四年
『空の思想史 原始仏教から日本近代へ』 立川 武蔵 二〇〇三年
『ヨーガの哲学』 立川 武蔵 二〇一三年[編集部]
★この記事はiCardbook、『自由の相互承認—— 人間社会を「希望」に紡ぐ ——(上)現状変革の哲学原理』を構成している「知識カード」の一枚です。
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