ウンマ:「神の僕」の共同体

イスラームの社会秩序は、絶対的な神とそれに服従する信徒を前提とする。信徒の存在は、神と信徒が直接に個々に結んだ契約に基づく。この信徒が形成する共同体がウンマであり、ウンマ構成員が私的ならびに公的生活において守るべき規範群がシャリーア(イスラム法)である(第一巻第3章第1節:森羅万象は唯一審アッラーの被造物)。

このウンマの形成に関して、文化人類学者の片倉もとこは、イスラームにおける「性弱説」という興味深い人間観を指摘した。つまり、シャリーアは、「主」たる神が一方的に下した命令である。ところが、個々のイスラーム教徒は、個人の責任で、シャリーアを順守できるほど強くはない。そこで、同じ神に帰依する仲間であるイスラーム教徒は、助け合ってシャリーアを順守し、正しい生活をするために、ウンマを形成したというのである。

参考文献:
イスラーム文化―その根柢にあるもの(岩波文庫)』  井筒俊彦(岩波書店、1991年)
イスラームの日常世界(岩波新書)』  片倉もとこ(岩波書店、1991年)

□参照知識カード:
イスラームの経済ビジョンとは
ウンマはすべてのイスラーム教徒の共同体
ウンマ


 

★この記事はiCardbook、『イスラーム世界の社会秩序 もうひとつの「市場と公正」 Vol.3 基本概念・基礎用語編』を構成している「知識カード」の一枚です。


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