ワクフに設定できる財産(ワクフ財)は、原則として不動産(不動産ワクフ)である。
1)宗教施設では、モスクやイスラーム教育を行う学校、
2)公共・福祉施設では、病院、救貧院、孤児院、水道施設、
3)商業施設では、店舗、工房、隊商宿、ハンマームと言われる公衆浴場などが挙げられる。
そして、こうした宗教施設、公共・福祉施設、商業施設というものをセットにしてワクフを設定し、商業施設から得られる賃料や儲けを、病院や救貧院、孤児院の運営や、モスクの慈善活動やイスラーム学校の運営、あるいはそのイスラーム学校で教えている先生の給料に充てている。
参考文献:
「ワクフ」林佳世子 『岩波イスラーム辞典』 大塚和夫他編(岩波書店、2002年)
『イスラーム世界の社会秩序 もうひとつの「市場と公正」Vol.1 イスラーム経済社会の構造(理論編)』第7章第1節:ワクフ制度/第7章第2節:ワクフ制度の独自性 加藤博(詩想舎、2020年)
高岩伸任「ワクフと信仰―イスラームと英米における「財産的取り決め」の比較・検討」『イスラーム世界研究』3(2)、 pp. 241-254、2010年. <https://kias.asafas.kyoto-u.ac.jp/1st_period/contents/pdf/kb3_2/14takaiwa.pdf>
□関連知識カード:
ワクフとは
慈善ワクフと家族ワクフ
ワクフ制度の特徴:その4 所有権の凍結
ワクフ制度の特徴:その5 私的欲望と公的福祉の両立
★この記事はiCardbook、『資本主義の未来と現代イスラーム経済(下) 金融資本主義からの脱却と「利他利己」の超克』を構成している「知識カード」の一枚です。
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