そもそも経済とは何か:広義の経済と狭義の経済

「人間は本性上社会的動物である」との言葉で喚起されるのは、そもそも経済とは何であるかとのプリミティブな問いである。

この言葉がもつ含意は、次の二つである。第一は、人間は他の動物と同じく、生命体である以上、自らの生存と子孫の維持のために生活の糧を得なければならない。第二は、肉体的にきわめて弱い存在でしかない人間は、他の動物以上に、生存と種の保存のための生活の糧をえるのに、集団を組織してでしかなしえない、と言うことである。

そのため、人間はその生命ならびに子孫の維持のため、外界の物質的世界に対して、「集団でもって」「働きかけ」、生活の糧を得なければならない。労働とは、この人間の外界の物質的世界への働きかけを、そこでなされる分業・協業とは、集団での労働と労働の結びつきを意味する。

つまり、広義に解された経済とは、人びとがある分業・協業体系のもとで、労働を通して、生活の糧を体系的かつ組織的に得るプロセスのことである。そして、このプロセスが市場を介してなされる、狭義に解された経済が市場経済である。

参考文献:
イスラム世界の経済史』 第一部第1章第1節:経済―広義の経済と狭義の経済  加藤博(NTT出版、2005年)


 

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