再統合されたイスラーム経済システムの特徴

もちろん近代以前のイスラーム経済システムが現代にそのまま再興しているわけではない。再統合されようとしているイスラーム経済システムの最も大きな特徴は、その脱領域性である。

近代以前のイスラーム経済システムでは、帝国や都市のように可視的に措定できる地理空間で経済の諸アクターが有機的に結びついていた。

他方、再統合されたシステムでは、アクターが必ずしも可視的な空間に存在しているわけではなく、グローバルに張り巡らされたサイバー・ネットワークによって諸アクターが結びついており、遠く離れた顔の直接見えない人どうしが、1つのシステムを有機的に統合させているのである。

参考文献:
「現代イスラーム経済の挑戦―ポスト資本主義時代の新たなパラダイムのために」長岡慎介 『秩序の砂塵化を超えて―環太平洋パラダイムの可能性』221-248頁、  村上勇介・帯谷知可編(京都大学学術出版会、2017年)
Shinsuke Nagaoka “Resuscitation of the Antique Economic System or Novel Sustainable System? Revitalization of the Traditional Islamic Economic Institutions (Waqf and Zakat) in the Postmodern Era,” Kyoto Bulletin of Islamic Area Studies 7, pp. 3-19, 2014.

 


★この記事はiCardbook、『資本主義の未来と現代イスラーム経済(下) 金融資本主義からの脱却と「利他利己」の超克』を構成している「知識カード」の一枚です。



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