ワクフへの注目

イスラーム金融と並んで近年注目を集めているのは、伝統的イスラーム社会経済制度の再生である。その1つがワクフと呼ばれる財産寄進のしくみの再生である。

ワクフは、近代以前のイスラーム世界各地で活用され、都市の繁栄や社会の安定に貢献してきた。近代に入って、公共インフラの整備や社会福祉の担い手は新たに登場した近代国家に移っていき、ワクフは衰退していった。しかし、グローバル資本主義の浸透による格差の拡大や社会福祉財政の逼迫がイスラーム世界各地でも表面化してきたことによって、近年、その打開策としてこのワクフに再び注目が集まるようになったのである。

参考文献:
お金ってなんだろう?あなたと考えたいこれからの経済』第7章:これからの経済を考えるヒントって?  長岡慎介(平凡社、2017年)
文明としてのイスラム―多元的社会叙述の試み』  加藤博(東京大学出版会、1995年)
イスラーム世界の社会秩序 もうひとつの「市場と公正」Vol.1 イスラーム経済社会の構造(理論編)』第7章第4節:ワクフ制度と都市空間  加藤博(詩想舎、2020年)

□関連知識カード:
 商業・宗教複合体としてのマディーナ
 マディーナにおける商館
 公共施設としての商館
 商館と賃貸借

 


★この記事はiCardbook、『資本主義の未来と現代イスラーム経済(下) 金融資本主義からの脱却と「利他利己」の超克』を構成している「知識カード」の一枚です。



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