陸路における輸送コスト

また、陸路での交易は、その輸送コストが高いとの理由から、低く評価される傾向がある。しかし、これまでの研究成果をみるかぎり、キャランバン交易の輸送コストは思いのほか低かったようである。

砂漠は開放空間として、ものとひとの移動に好都合であった。そこには、オアシスを結ぶ形で、道が縦横に走っていた。それらの道は、商人たちの交易ルートとして、また信仰者の巡礼ルートとして使われた。

砂漠での開放性と安全性は、森林やジャングルとの比較において明らかである。砂漠はものとひととの交流の場として海にたとえられることがあるが、障害物が少ないという点において、海より安全でさえあった。

参考文献:
文明としてのイスラム―多元的社会叙述の試み』 第1章:生態系  加藤博(東京大学出版会、1995年)
N.Steensgaard,The Asian Trade Revolution of the Seventeenth Century. The East lndia Companies and the Decline of the Caravan Trade,The University of Chicago Press, 1974

 

 

★この記事はiCardbook、『イスラーム世界の社会秩序 もうひとつの「市場と公正」 Vol.2 市場経済における「イスラームの道」(歴史編)』を構成している「知識カード」の一枚です。


◎iCardbookの商品ラインナップはこちらをクリック