ヨーロッパ中心史観からくる経済観におけるバイアス

世界経済史研究におけるオスマン帝国への言及の少なさには、ヨーロッパ中心史観という歴史観からくるバイアスのほか、経済発展の指標をどこに求めるかの経済観からくるバイアスとが関係している。

それは、流通と消費を軽視し、生産を重視する経済観からくるバイアスである。このバイアスの起点は、18世紀のヨーロッパで起きた産業革命である。現在の世界経済史の教科書のほとんどは、産業革命から出発している。

このバイアスは、オスマン帝国の経済に対する低い評価につながるように思われる。オスマン帝国の経済が流通と消費を重視したイスラーム経済の性格を持っているからである。*

参考文献:
「世界経済史におけるイスラ-ムの位置」加藤博 『社会経済史学の課題と展望』  社会経済史学会編(有斐閣、2002年)
トルコ近現代史―イスラム国家から国民国家へ』  新井政美(みすず書房、2001年)
オスマン帝国の海運と海軍』  小松香織(山川出版社、2002年)

* オスマン帝国は強大な海軍を持ち地中海に進出していたが、歴代のイスラーム王朝と同じく、基本的には内陸指向の強い政治権力だった。(小松香織『オスマン帝国の海運と海軍』 (山川出版社、2002年))


 

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