感覚刺激に応答する神経細胞を探す

神経細胞がどのような情報に応答するか調べる典型的な実験では、実験動物の神経細胞の活動を計測しながら、感覚刺激を与えたり、行動の状態を観察します。

例えば、視覚刺激として様々な画像を、動物の前のモニターに表示します。このとき、第一次視覚野の神経細胞から記録をすると、特定の線分の傾きを呈示した時にのみ強く活動を生じる神経細胞が存在することがわかります。

一九八一年のノーベル賞医学生理学賞の対象となった「視覚野の神経細胞の方位選択性」は、このような方法で発見されたものです(※)。

 

※:ヒューベルとウィーゼルがノーベル賞・医学生理学賞を受賞したきっかけになった「実験」には偶然が介在していました。

猫に丸や三角を見せて猫のニューロンの反応をみていたのですが、最初まったく反応しませんでした。当時OHPシートに視覚刺激(丸や三角など)を印刷したものを刺激として見せていたのですが、ヒューベルがOHPシートを交換のために動かしたとき、ニューロンが不意に反応したのです。

OHPシートの「縁」が作り出した、スクリーン上の影、すなわち「線分」刺激に対してニューロンが活動を始めた、それが「方位選択性ニューロン」が発見された瞬間だったのです。[編集部]

・Hubel and Wiesel Cat Experiment - YouTube https://www.youtube.com/watch?v=IOHayh06LJ4


■参考文献(本のタイトルをクリックしてアクティブラーニング)

『「見る」とはどういうことか―脳と心の関係をさぐる』  藤田一郎(化学同人、二〇〇七年)

『ニューロンから心をさぐる (岩波科学ライブラリー (64))』  桜井芳雄(岩波書店、一九九八年)

『脳・心・人工知能 数理で脳を解き明かす (ブルーバックス)』  甘利俊一(講談社、二〇一六年)


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