資本主義に対抗して主張されたイスラーム金融

現代のイスラーム経済はイスラームの経済ビジョンを現代の社会経済状況において具体化、制度化させたものである。その象徴がイスラーム金融である。

イスラーム金融といったところで、はっきりとした定義があるわけではない。イスラームの教義、慣行に従って運営される金融の総称、という程度の意味である。イスラーム金融という呼称は、1990年代以降に普及したもので、それ以前には、イスラーム銀行という名称で通っていた。

イスラーム経済論の中核がイスラーム銀行論であった。イスラーム銀行の別称は、無利子銀行である。この事実が示すように、イスラーム経済論は、資本主義に対抗して主張された。

その象徴が利子の禁止であり、コーランにおけるリバーという単語に「利子」という定義を与え、その禁止をうたったのである。

イスラーム経済論とは、煎じ詰めれば、イスラーム(無利子)銀行論であった。

参考文献:
イスラム世界論―トリックスターとしての神』 第一部:イスラムとポストモダン  加藤博(東京大学出版会、2002年)
緑の資本論』  中沢新一(集英社、2002年)
無利子銀行論』  M. バーキルッ=サドル 黒田壽郎・岩井聡訳(未知谷、1994年)

■関連知識カード/章説明他:
コーラン


 

★この記事はiCardbook、『イスラーム世界の社会秩序 もうひとつの「市場と公正」 Vol.2 市場経済における「イスラームの道」(歴史編)』を構成している「知識カード」の一枚です。


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