イスラーム教からイスラーム文明へ

イスラームは、キリスト教、仏教と並ぶ世界三大宗教の1つである。イスラームが、この2つの宗教と異なるのは、政治、経済、社会を包み込む首尾一貫したシステム体系を提示した点である。西暦7世紀にアラビア半島で登場したイスラームが、その後、広域に拡大していった*のは、単なる宗教に収まらない1つの文明システムとしての性格がイスラームにはあったためである。

参考文献:
イスラーム 文明と国家の形成』  小杉泰(京都大学学術出版会、2011年)
イスラーム世界の社会秩序 もうひとつの「市場と公正」Vol.1 イスラーム経済社会の構造(理論編)』第1章第1節:経済は宗教から逃れることができるのか?  加藤博(詩想舎、2020年)

*イスラーム登場以前のアラビア半島は世界中いたるところに見られる部族社会であった。部族社会では正負の互酬性を起点に、部族内では厳しい上下序列関係、部族間では血による復讐の応酬が常態であった。そこへ新しい一神教、新しい社会理念としてのイスラーム(神との間の直接的無条件な委託=信者間の平等性)が登場することで、部族間の対立を超克するイスラーム共同体が短期間のうちにアラビア半島を席巻し、その後、中央アジアからイベリア半島に至る広大なイスラーム帝国を生み出したのである。[編集部]

□関連知識カード:
 イスラームという宗教の生命力

 


★この記事はiCardbook、『資本主義の未来と現代イスラーム経済(下) 金融資本主義からの脱却と「利他利己」の超克』を構成している「知識カード」の一枚です。



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