ヒマーヤ

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保護契約。ヒマーヤは保護を意味するアラビア語であり、イスラーム世界での社会関係形成にとって重要な概念である。

一般的には、パトロン・クライアント関係において、クライアントの提供する奉仕に対してパトロンが与える保護を意味するが、イスラーム世界に特徴的なヒマーヤとして、国家と遊牧民の首長との間のヒマーヤ契約がある。

遊牧民は自らが商人であったが、機動力と武力をもつ戦闘集団としての性格も備えていた。彼らは国家との間に、交易を担うキャラバンに対する安全保障の見返りに保護料を徴収する契約を結んでいた。その時の契約、あるいはそれによって保証される保護のことをヒマーヤといった。この契約のもとで、運輸のための役畜の貸与、道案内、水場の探知、停泊地の選定、人および積荷の保護・管理や情報提供などが遊牧民たちの職務となっていた。

参考文献:
「イスラーム市場社会の歴史的構造」加藤博 『比較史のアジア 所有・契約・市場・公正 (イスラーム地域研究叢書)』  三浦徹ほか編(東京大学出版会、2004年)
「世界経済史におけるイスラ-ムの位置」加藤博 『社会経済史学の課題と展望』  社会経済史学会編(有斐閣、2002年)

■関連知識カード/章説明他:
イスラームにおける互酬的社会観


 

★この記事はiCardbook、『イスラーム世界の社会秩序 もうひとつの「市場と公正」 Vol.3 基本概念・基礎用語編』を構成している「知識カード」の一枚です。


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