イスラーム法体系の中のカーヌーン(行政法)

中世キリスト教圏では、カノン法と言えば宗教法であったが、カノンの言葉がイスラーム世界で使われるようになると、逆の意味を持つようになり、世俗的な法についての名称になった。カーヌーンである。*

神の意志、つまり啓示を法源とするシャリーアに対して、カーヌーンは時の政治権力者、つまり国家の意志を法源とし、政治、行政にかかわる規範群を意味した。そのため、世俗法、行政法と訳される。

参考文献:
イスラム世界論―トリックスターとしての神』 第二部第3章第2節:イスラム法とイスラム法体系  加藤博(東京大学出版会、2002年)

* カノンは尺度、規範、規則を意味するギリシア語に由来する。カトリック教会の制定法、カトリック教会の教徒を規律する法がカノン法。[編集部]


 

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