どれだけお金を持っていても、地位や名誉を手に入れても、わたしたちは満足に「自由」を感じられないことがある。
なぜか? それは、そのような状態においてなお、わたしたちに「自由」を感じられるだけの〝実存的条件〟が整っていないからである。※I):たとえばそれは、強すぎる承認欲望のせいかもしれない。ラッセルは次のように言っている。
「もしも、あなたが栄光を望むなら、あなたはナポレオンをうらやむかもしれない。しかし、ナポレオンはカエサルをねたみ、カエサルはアレクサンダーをねたみ、アレクサンダーはたぶん、実在しなかったヘラクレスをねたんだことだろう。したがって、あなたは、成功によるだけでねたみから逃れることはできない。」(『幸福論』 (岩波文庫、一九九一年))
■参考文献
『幸福論』 バートランド・アーサー・ウィリアム・ラッセル 原著一九三〇年
バートランド・アーサー・ウィリアム・ラッセル:英国の数学者、哲学者、倫理学者、平和運動家(一八七二~一九七〇年)。名付け親が哲学者のジョン・スチュアート・ミル。ミルはラッセル誕生の翌年に死去したが、その著作はラッセルの生涯に大きな影響を与えた。第一次大戦の反戦運動で大学を追われ、第二次大戦後も平和運動を推進、一九五〇年ノーベル文学賞受賞。
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註
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「もしも、あなたが栄光を望むなら、あなたはナポレオンをうらやむかもしれない。しかし、ナポレオンはカエサルをねたみ、カエサルはアレクサンダーをねたみ、アレクサンダーはたぶん、実在しなかったヘラクレスをねたんだことだろう。したがって、あなたは、成功によるだけでねたみから逃れることはできない。」(『幸福論』 (岩波文庫、一九九一年)) |