ブローデルの「全体史」そしてポメランツの「大分岐」

ブローデルは「全体史」を主張し、地中海世界史のなかにオスマン帝国を組み込もうと試みた。

そのブローデルの歴史学に触発されて近代世界システム論を展開したのがエマニュエル・ウォーラーステインであった。これらは、ヨーロッパ中心史観に基づかないグローバルな世界経済史叙述の試みであった。

さらに、近年、グローバル・ヒストリーの潮流を作り出したケネス・ポメランツによる大分岐(Great Divergence)論争が注目された。この議論が対象としているのは、ヨーロッパと中国との生活水準の比較であり、近世までほぼ同じであったヨーロッパと中国の生活水準が産業革命を画期として両者に大きな差、つまり「大分岐」が生じたとされた。

しかし、そこでヨーロッパとの比較の対象として取り上げられているのはヨーロッパと遠く離れたアジアの中国であり、その議論のなかで隣接するオスマン帝国が言及されることはない。

参考文献:
「世界経済史におけるイスラ-ムの位置」加藤博 『社会経済史学の課題と展望』  社会経済史学会編(有斐閣、2002年)
フェルナン・ブローデル[1902-1985]』  フェルナン・ブローデル 井上幸治編・監訳(新評論、1989年)
大分岐―中国、ヨーロッパ、そして近代世界経済の形成』  K. ポメランツ 川北稔訳(名古屋大学出版会、2015年)
グローバル経済の誕生 貿易が作り変えたこの世界』  ケネス・ポメランツ、 スティーブン・トピック 福田邦夫・吉田敦訳(筑摩書房、2013年)

■関連知識カード/章説明他:
ブローデルの「全体史」
グローバルヒストリー
世界システム論
大分岐


 

★この記事はiCardbook、『イスラーム世界の社会秩序 もうひとつの「市場と公正」 Vol.2 市場経済における「イスラームの道」(歴史編)』を構成している「知識カード」の一枚です。


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