餌付けによる影響

初期のニホンザル研究のほとんどは餌付け群で行われていたが、徐々に餌付けの影響が指摘され始めた。

餌付けは出生率を上げて、群れを野生では見られないほど巨大なものにし、さらに移動距離と移動範囲を狭め得る。さらに、栄養豊富な餌をめぐって群れ内の争いが増える。彼ら本来の社会を知るために野生での研究が求められた。I):初期の研究から、落葉樹林に住む野生ニホンザルの群れは、常緑樹林の群れと比べて、遊動範囲が広いことがわかっていた。群れの大きさが同じでも、環境によって行動が違うのだ。そこで日本の霊長類学者たちは、落葉樹林帯の宮城県金華山島と常緑樹林帯の鹿児島県屋久島でニホンザルの社会と生態を比較するプロジェクトを立ち上げた。


■参考文献
『ニホンザルの自然社会:エコミュージアムとしての屋久島』 高畑由起夫・山極寿一編(京都大学学術出版会、二〇〇〇年)

『サルと歩いた屋久島』  山極寿一(山と渓谷社、二〇〇六年)

『野生ニホンザルの研究』  伊沢紘生(どうぶつ社、二〇〇九年)

杉山幸丸、渡邊邦夫、栗田博之、中道正之.2013. 「霊長類学の発展に餌付けが果たした役割」霊長類研究.29(2):63-81.
https://www.jstage.jst.go.jp/article/psj/29/2/29_29.011/_article/-char/ja/

 

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I. :初期の研究から、落葉樹林に住む野生ニホンザルの群れは、常緑樹林の群れと比べて、遊動範囲が広いことがわかっていた。群れの大きさが同じでも、環境によって行動が違うのだ。そこで日本の霊長類学者たちは、落葉樹林帯の宮城県金華山島と常緑樹林帯の鹿児島県屋久島でニホンザルの社会と生態を比較するプロジェクトを立ち上げた。