子殺し行動が複雄群を増やすメカニズム

以上の観察と分析をまとめると、子殺し行動の頻度とゴリラの社会について以下のことが言えるだろう。

まず、子殺し行動の頻発によって、メスはオスとの結びつきを強固にする。また、将来の子殺しを避けるため、メスは単独で群れを移る。さらにメスは、子殺しオスから防衛してくれるオスの多い複雄群を好むようになる。これらのメスの行動の変化によって、ヴィルンガでは複雄群が多くみられるのだろう。


■参考文献
『ゴリラ 第二版』第五章 変化する社会  山極寿一(東京大学出版会、二〇一五年)

『暴力はどこからきたか——人間性の起源を探る』第五章 暴力の自然誌―子殺しから戦争まで  山極寿一(NHKブックス、二〇〇七年)

★この記事はiCardbook、『人類の社会性の進化(Evolution of the Human Sociality)(下)共感社会と家族の過去、現在、未来』を構成している「知識カード」の一枚です。

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