資本基盤とか、実物界とか用語が難しくてへこみそう

これまでの経済学のパラダイム転換を企図しているから

用語を難しく感じるのは当然です。エコロジカル経済学は伝統的な経済学のこれまでの蓄積の上に、むしろそれが内包するロジックの中から、ロジックそのものの矛盾を突き、それを超え出ていこうとする学問体系だからです。伝統的な経済学とよく似た概念を、しかしそれとは厳密には区別する必用から別の単語、用語を使うことになります。また新しい知識体系ゆえ、なじみのない考え方がが出てくることもあるでしょう。用語が難しいと感じる、もうひとつの要因ですね。

もっと教えて!

近代化と社会科学の誕生

20世紀型の経済社会を変える。これがエコロジカル経済学の使命です。そもそも経済学をはじめとする社会科学(他に政治学、社会学)は「近代」の所産であり、そこには社会は変えられる、しかも変わることは良いことだという認識、感覚があります。これは近代以前の社会にはなかったことです。それまでは基本的に社会は変化しなかったし、変化は望ましくないものでした。

この認識、感覚の末に社会科学が生まれました。19世紀のことです。すべてはフランス革命が西ヨーロッパに持ち込んだことだと、『社会学史』の中で大澤真幸氏が言っています。

「社会は変えられる」の裏側で、「今起きていること、現に起きていることが、現に起きているのに、どこかありそうもない」という感覚、不確実性の感覚が生まれた。そこで現に起きていることを、あえて説明しようとする。「なぜそれは起きたのか」「ありそうもないことが起きたのはなぜなのか」、と問う意識。それが社会科学が生まれた根っこにはあります。

20世紀型の経済社会に対し、なぜ20世紀(特に戦後)の経済社会はこのようなものになったのか。これは確かに今起きていることなのだが、「ありそうもないことが起きた」ようにも感じる。ならば、ありうべき「経済秩序とは何なのか」。社会科学の一角を占める経済学の中から、「近代」の問いをさらに深め、エコロジカル経済学は生まれ、今も進深化の途上です。

たとえば「プラスチックごみ」

もう少し具体的な事例で考えてみましょう。

伝統的な経済学は「ごみがでない(ことを前提にした)生産と消費の理論」でした。これに対して、「ごみが出る生産と消費の理論」を提示したのがエコロジカル経済学です。

たしかに「ごみがでない生産と消費の理論」でも環境問題は「外部性」という概念で処理、対応が可能、と言うことになっています。しかしこの処理、対応は「ごみ」を「はた迷惑」として取り扱うだけであり、根本的な解決には至りません。

クジラから大量のプラスティックごみが出た、というニュースを見聞きしたことはありませんか。

「若いオスのアカボウクジラは死体となって、フィリピン南部ミンダナオ島ダヴァオの東に打ち上げられた。16日に死体を回収したディボーン収集博物館の研究者によると、「クジラの体内にこれほど大量のプラスチックを見つけるのは初めて」だとフェイスブックに書いた。

クジラの胃の中には「大量のプラスチック袋」や米袋16枚などが入っていたという。」
(映像も同じ出典 ・死んだクジラ、胃に40キロ分のプラスチック - BBCニュース https://www.bbc.com/japanese/47621048

生産にしろ、消費にしろ、「ごみ」などの不要物は必ず出ます。それを組み込んでこそ、環境問題により効果的に取り組むことができるのです。

ありうべき「経済秩序とは何なのか」。社会を変えていくための理論と制度の仕組みを探求していきましょう。たとえ用語が難しくてへこみそうになっても。とりわけ現状を変えるには「制度」設計が重要です。

 


ありうべき「経済秩序とは何なのか」。社会を変えていくための理論と制度の仕組み学習する意義を理解したあなたのために、そのための基本用語、また市場が決定できる(伝統的な経済学の基本コンセプト)範囲の認定に関する勉強をする際、参考になる書籍を紹介していきましょう。

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■参考文献(書籍)リスト

(参考文献のもっと詳しい内容は、書籍タイトルをクリック。知識カード(書名の下)もクリックするとコンテキスト(文脈)がわかりとても便利。)

エコロジカルな経済学
 生産の一般理論
 物量決定のステージ
 サービス量決定のステージ
エントロピー法則と経済過程
 資本基盤

サービス・ドミナント・ロジックの発想と応用
 サービス・ドミナント・ロジック
ソーシャル・キャピタル
 社会関係資本基盤

それをお金で買いますか
 人的資本基盤
環境 持続可能な経済システム
 環境負荷

環境と経済を再考する
 手入れ
 価格体系
環境を守るほど経済は発展する
 生産物―「サービスの缶詰」
 市場における調整機能の効果と限界

環境基本法の解説(改訂版)
 環境基本法における環境
環境政策論
 生産と環境負荷

環境政策論 第三版
 物理的環境
環境保全と持続的農業
 水/農作物と魚

朽ちるインフラ
 人工資本基盤
経済学の神話
 人工物

孤独なボウリング
 社会関係資本基盤
資源経済学のすすめ
 枯渇性資源と更新性(再生可能)資源

自然資本の保全と評価
 自然資本基盤
自然資本入門
 自然資本基盤

社会インフラの危機 つくるから守るへ
 人工資本基盤
種族維持と個体維持のあつれきと提携
 

循環の経済学
 通過資源
循環型社会形成推進基本法の解説
 生産と環境負荷

食料を読む
 水/農作物と魚
新しい火の創造
 枯渇性資源と更新性(再生可能)資源

人的資本
 人的資本基盤
水危機
 水/農作物と魚

政策・合意形成入門
 制 度
政策科学入門(第二版)
 政 策

生産マネジメント入門 
 二種類の生産関数
生産マネジメント入門 
 二種類の生産関数

生態系サービスという挑戦
 生態系サービス
生態系サービスと人類の将来
 生態系サービス

生態系ってなに?
 生態系
動物にとって社会とはなにか
 

熱力学―現代的な視点から
 実物界
有閑階級の理論
 制 度

有限の生態学
 生態系


 

◎これは『なぜ経済学は経済を救えないのか(倉阪秀史)上下巻』の「(下)第一章 基本用語」と「(下)第二章 市場による決定が行える範囲」の参考文献(書籍)をリスト化したものです。

書籍のフルタイトルは『なぜ経済学は経済を救えないのか━資本基盤マネジメントの経済理論へ━(下) 政策展開の経済理論』です


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