古典派経済学や新古典派経済学で実物界からの離脱が起きたのはなぜ?

実物界からの離脱は「近代(化)」と関係がある

古典派経済学が成立し、そこからさらに新古典派経済学が生まれた時代、経済学者に、彼らが意識するとしないとにかかわらず影響を与えた一番の思潮は「近代化」です。ここで「近代」とはたんなる「最近の時代」のことではありません。「近代」とそれ以前との間には明確な歴史の断絶があるのです。「近代(化)」とはそれまでの人類の歴史とは截然区別される大転回が起きた時期あるいは事象のことです。実物界からの離脱も「近代(化)」と関係があります。

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近代(化)と経済

古典派経済学が成立した時代は、「近代化」の鳥羽口にありました。そして新古典派経済学は「近代化」の生成とともに、むしろ「近代」を形作るひとつの要素として登場してきました。

そもそも「近代(化)」はいくつかの革命によって引き起こされました。中でも、科学革命、市民革命、産業革命が重要で、かつこの三つの革命は相互に関係しあっています。つまり科学革命によって科学的知識が発展するとそれが機械技術に応用され、モノの生産や人の労働のあり方が大きく変わりました。従来の伝統的な農業や手工業に代わって、機械を用いた大規模な大量生産が始まったのです。モノの生産性は飛躍的に向上し、物質的な豊かさを追求することが社会全体に広がっていきました。産業社会の出現です。

この、産業革命による経済の仕組みの変更を体系的知識として整理し、産業社会の出現を後押ししたのが新古典派経済学でした。

科学革命と経済学

同時にこの新古典派経済学の登場には、科学革命のもたらした合理主義の考え方が影響を与えていました。科学革命とは知のキリスト教からの解放のことであり、人間の理性が知を形成するという確固たる信念が生まれたということです。それまでは何が真理かは、キリスト教においてどう説明されているかによりました。ところが近代になると、人間が理性に基づいて論理的に考え、それを実験や観察により確かめる、こういう方法で得られた知識こそが、正しい知識、つまり真理だということになりました。

「我、考えるゆえに、我あり」

デカルトは理性を使った思弁を極限にまで推し進めることで、この真理にたどり着いたと考えました。

「私は一つの実体であって、その本質あるいは本性はただ、考えるということ以外の何ものでもなく、存在するためになんらの場所をも要せずいかなる物質的なものにも依存しない。」

『方法序説』においてデカルトはこう言って、精神と物質との二元論を打ち出したのです。

このデカルト的二元論はその後さらに深められ、精神が物質や身体から独立して存在しうるとする考えに至ります。このことが、われわれの生命や人間の経済が、常に物質的な制約を受けているという事実を軽視することにつながっていったのはある意味やむを得ないものであったかもしれません。こうして経済学は、実物界からの離脱へと向かっていったのです。


それでは、「近代(化)」がどういう経路で、経済学に実物界からの離脱へと向う道筋をつけたのか。それを知る参考となる書籍を紹介していきましょう。

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■参考文献(書籍)リスト

(参考文献のもっと詳しい内容は、書籍タイトルをクリック。知識カード(書名の下)もクリックするとコンテキスト(文脈)がわかりとても便利。)

アメリカ革命とジョン・ロック
 ロックの所有権論とその革新性
デカルトと合理主義
 機械論的自然観

方法序説
 精神と物質との二元論
 機械論的自然観
環境と経済を再考する
 経済と身体性
 ロックの所有権論の前時代性
 人間の自然への優位と経済学

経済学の理論
 限界革命
国家論
 自然・身体・物質に対する精神の優位性

市民の国について
 人口の増大という間違った使命感
省察 情念論
 人もまた機械的存在

人間知性論
 自然・身体・物質に対する精神の優位性
人間不平等起源論
 自然に対する人間の優位性としての私的所有

人知原理論 
 物質否定論
仁学
 心身二元論・物質否定論と環境

統治論
 自然に対する人間の優位性としての私的所有
 ロックの所有権論とその革新性


◎これは『なぜ経済学は経済を救えないのか(倉阪秀史)上下巻』の「(上)第二章 実物界からの離脱と成長経済への希求」の参考文献(書籍)をリスト化したものです。

書籍のフルタイトルは『なぜ経済学は経済を救えないのか━資本基盤マネジメントの経済理論へ━(上) 視座と理念の大転換』です


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