経験を取り込んで人工知能は、人工知性となる
人工知能は現象学を基礎に取り込むことで、より豊かな経験を内包する知能の構築を目指すことができます。人工知能の開発には現象学的転回が必要だ、とゲームAI開発者三宅陽一郎氏(※)は考えています。
人間は経験を血肉化する、その意味で高度な生物です。つまり人間は、進化の系統発生を遂げながら、時間と空間の柔軟な可変フレームの中で問題を捉え、解決していく生物となりました。「知性」とは、この「知能の序列」が構造化され、高度化されたものへの名称であると言えます。現象学的転回が成功した暁の「人工知能」とは、「人工知性」とでも呼ぶべきものになっているかもしれません。
※IGDA日本ゲームAI専門部会設立(チェア)、DiGRA JAPAN 理事、芸術科学会理事、人工知能学会編集委員。また東京大学客員研究員、理化学研究所客員研究員(Miyake Laboについて・三宅陽一郎プロフィール – Miyake Labo https://miyayou.com/about/ )。
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デカルト世界観とAI
「人工知能」を「考える存在」であると捉えるのは、デカルト的な発想です。
工学的プロジェクトとしての人工知能の発展は、ほぼデカルト的世界観の中で進捗して来たと言えます。結果、思惟する存在という枠に人工知能を閉じ込めてしまいました。
しかし、現実で生きる生物はそんなことはありません。生活世界を人工知能に取り戻すためには、デカルト的世界観から抜け出す必要があるのです。(デカルト的世界観 – iCardbook|知の旅人に https://society-zero.com/icard/627460 )
デカルト的世界観を乗り越えるべく思弁を開始したのが、エトムント・フッサールです。フッサールは現象学の創始者として知られる哲学者です。人工知能もまた、現象学の射程の中で開発することで、より大きな可能性を根底から持ち直すことができます。
現象学とAI
目をやると窓の向こうに道があります。道をゆけば海があり砂浜が続いているはずです。
しかし砂浜があると思っていたがとうの昔に護岸になっていることもあるでしょう。見てしまえば、たしかに実在は否定されますが、イメージしていた経験は残ります。
思惟すること、精神を活動させること、それはそれ自身固有の現象であり、世界の実在とはある程度独立して、経験となります。現象学は経験から出発します。どんな前提もなしに、経験をまず出発点として、世界のさまざまな有形・無形なもの記述し、探究して行きます。(思惟と経験 – iCardbook|知の旅人に https://society-zero.com/icard/558814 )
そしてあらゆる経験を受け入れるのは身体と知能の全体です。
知能は、人間の物理的、情報的全体をもって世界と対峠するところから生まれます。人工知能もまた知能と身体の全体を持って世界を経験し、世界を受け止めることで知能を向上させていきます。(人工知能の現象学的転回 – iCardbook|知の旅人に https://society-zero.com/icard/223811 )
ちなみに、現象学に身体的な視点を持ち込んだのは、メルロ=ポンティでした。彼は「「我々は身体によってこの世界に住み着いている存在である。(『知覚の現象学』)」と言っています。
人工知能の開発と関係の深い、デカルト、フッサール、メルロ=ポンティについて説明した参考文献(書籍)を紹介しましょう。
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■参考文献(書籍)リスト
(参考文献のもっと詳しい内容は、書籍タイトルをクリック。関連知識カードもクリックするとコンテキスト(文脈)がわかりとても便利。)
イデーン Ⅰ-Ⅰ
◎関連知識カード
・フッサールの超越論的主観性
デカルト的省察
◎関連知識カード
・身体的視点
・思惟と経験
人工知能のための哲学塾
◎関連知識カード
・知能を現象学的に見る
・人工知能と現象学
・人工知能の現象学的転回
知覚の現象学 I
◎関連知識カード
・身体的視点
・フッサールの超越論的主観性
・「思惟」から「作用」へ
方法序説
◎関連知識カード
・デカルト的世界観
論理学研究
◎関連知識カード
・フツサ-ル現象学
◎これは『人工知能と人工知性(三宅陽一郎)』の「第八章 現象学による人工知能概念の再構成へ」及び「第九章 「エージェント・アーキテクチャ」と現象学的人工知能」の参考文献(書籍)をリスト化したものです。
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