環境が群れ間関係をつくり、群れ間関係がオスの行動を決める

ここまでの一度話をまとめよう。

栄養の高い食物が豊富な屋久島では、より貧栄養な環境の金華山島と比べて、サルの群れどうしはより激しく争う。したがって群れの中に多くの強いオスを引き込むメリットが高い。この群れ間の激しい争いが、高いオス割合と単独オスによる群れの「乗っ取り」を引き起こしているのだろう。


■参考文献
『ニホンザルの自然社会:エコミュージアムとしての屋久島』  高畑由起夫・山極寿一編(京都大学学術出版会、二〇〇〇年)

『サルと歩いた屋久島』  山極寿一(山と渓谷社、二〇〇六年)

「日本の霊長類ニホンザル研究の歴史と展望」  山極寿一(『日本の哺乳類学2.中大型哺乳類・霊長類』所収[二九~四九ページ] 東京大学出版会、二〇〇八年)

★この記事はiCardbook、『人類の社会性の進化(Evolution of the Human Sociality)(上)「社会」の学としての霊長類学』を構成している「知識カード」の一枚です。

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