(下巻)第三章 持続可能性を確保するための市場外の判断

これは『なぜ経済学は経済を救えないのか —— 資本基盤マネジメントの経済理論へ——(下)政策展開の経済理論』(レーベル名:アイカードブック(iCardbook))の第三章を公開したブログ記事です。

※:アイカードブック(iCardbook)は「知識カード」を編成した電子書籍です。

◎最近、サル、イノシシ、ニホンジカなどが都市部にまで出没して話題になっています。まず急速に生息数が増加し、次に生息域が拡大し、生活環境、農林水産業及び生態系に係る被害が拡大しているのです。

1978年から2014年までの36年間で、ニホンジカが約2.5倍、イノシシが約1.7倍に生息域が拡大しており、今もこの拡大は続いています。

・環境省_認定鳥獣捕獲等事業者制度 | 二ホンジカ等の生息や被害の現状 https://www.env.go.jp/nature/choju/capture/higai.html
・全国のニホンジカ及びイノシシの個体数推定等について(平成28年3月 環境省自然環境局)
http://www.env.go.jp/press/files/jp/29490.pdf

これは自然環境への「手入れ」不足が招いた一種の政策ミスから起きている現象です。

行政機関や法律をつくる議会を構成する公務員、議員の発想、特に経済観念が20世紀型発想から脱却できていない、ひとつの現れ。ひとつの事例にすぎません。

社会のさまざまなところで起きる事件に、「成長」というキーワードにしがみつく20世紀型発想からの脱却が必要なことが漠然と感じられるようになってきています。しかしそれでは21世紀型の経済観念とは一体何なのか。具体的な内容がわからないことから来ている混乱、戸惑いがあります。

キャッチフレーズだけを連呼するのではなく、根っこの部分から考え直してみませんか。21世紀型の経済発想を。

◎さあ、下記の左にある◀をクリックして読んでみましょう。

なぜ経済学は経済を救えないのか —— 資本基盤マネジメントの経済理論へ——(下)政策展開の経済理論

■「はじめに」より

これまでの経済学は物理学のアナロジーにたって、人間による評価の表れとしての市場価格を重視する理論体系を構築した。しかしながら、市場に参加する主体は、実物界のメカニズムを十分に理解しておらず、市場価格を通じた調整のみでは各種資本基盤を十分に「手入れ」することができない。

人間の経済を支える実物的な基盤である「資本基盤」の持続可能性を確保するためには、市場外的な意思決定をつうじて、資本基盤の量を適正に保つとともに、その量に応じた「手入れ」が行われるようにする必要がある。このためには、人間の経済が実物界に支えられていることを再認識する新しい経済学の枠組みが必要となる。

倉阪 秀史(千葉大学大学院人文社会科学研究科教授(公共研究専攻)(二〇一七年二月現在))。

■目次構成:

(上) 視座と理念の大転換
はじめに
第一章 実物界からの離脱と成長経済への希求
第二章 実物界からの離脱へ至る思想的背景
第三章 エコロジカル経済思想への道程
第四章 実物界から離脱した経済学による環境問題へのアプローチ
第五章 実物を重視した経済学への展開

(下) 政策展開の経済理論
第一章 基本概念
第二章 市場による決定が行える範囲
第三章 持続可能性を確保するための市場外の判断
第四章 持続可能性を確保するための政策群

■(下巻)第三章中の知識カード一覧(ブログ公開(本記事)部分は太字)

43 市場で決められる価格
44 市場による意思決定の限界
45 リョコウバトの悲劇
46 生態系サービスの人工物による代替不可能性
47 不要物処理価格の設定
48 通過資源価格の決定
49 人工資本基盤価格の決定
50 自然資本基盤価格の決定
51 資本基盤の手入れレベル・環境負荷の抑制レベルの決定
52 ノー・ネット・ロスの原則(1)
53 ノー・ネット・ロスの原則(2)
54 資本基盤管理の方針
55 閾値把握
56 状態監視—不確実性とフィードバック
57 負荷管理—環境負荷の回避・最小化・代償措置の適正水準の確保
58 予防原則
59 攪乱対応—バックアップと区画化
60 生物多様性(biodiversity)
61 適正な手入れ水準の確保
62 資本基盤の存在量に応じた手入れ労働需要の確保
63 ライフサイクル思考の確保
64 源流対策の原則
65 拡大生産者責任原則
66 設計者責任原則
67 人工資本基盤の維持に関する判断
68 自然資本基盤の維持に関する判断
69 市場外的な意思決定を必要とする分野
70 合意形成
71 熟 議
72 熟議の場のデザイン

『なぜ経済学は経済を救えないのか —— 資本基盤マネジメントの経済理論へ——(下)政策展開の経済理論』はアイカードブックの一冊です。

 

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アイカードブック創刊の狙い | ちえのたね|詩想舎 http://society-zero.com/chienotane/archives/5063

本のネットワーク化 – iCardbook|知の旅人に http://society-zero.com/icard/network

日本人の情報行動の変化と<本>の未来 | ちえのたね|詩想舎 http://society-zero.com/chienotane/archives/7396/#4

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