無知のヴェールと原初状態

ロールズの理論の最大の問題は、彼の理論が根本的には「検証不可能」である点にある。

それは端的には、各人が自分の能力や境遇の一切を知らない、「無知のヴェール」に覆われた「原初状態」の設定という思考実験に現れている。※I):「〈公正としての正義〉において、伝統的な社会契約説における〈自然状態〉に対応するものが、平等な〈原初状態〉(original position)である。」(『正義論』 第一章・第三節 正義の理論の中心理念 (紀伊國屋書店、二〇一〇年))

■参考文献
『正義論』  ジョン・ロールズ 原著一九七一年
『他者への自由―公共性の哲学としてのリベラリズム』  井上 達夫 一九九九年[編集部]


★この記事はiCardbook、『自由の相互承認 —— 人間社会を「希望」に紡ぐ —— (上)現状変革の哲学原理』を構成している「知識カード」の一枚です。
   

 

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I. :「〈公正としての正義〉において、伝統的な社会契約説における〈自然状態〉に対応するものが、平等な〈原初状態〉(original position)である。」(『正義論』 第一章・第三節 正義の理論の中心理念 (紀伊國屋書店、二〇一〇年))