[はじめに]『なぜ経済学は経済を救えないのか』

◎選挙権ある人のための「社会科 教科書」——経済学篇——

これは、倉阪秀史(千葉大学)氏の、『なぜ経済学は経済を救えないのか —— 資本基盤マネジメントの経済理論へ——』の「はじめに」を公開したブログ記事です。
(上)視座と理念の転換
(下)政策展開の経済理論


はじめに

人口が減少する社会に突入した日本においては、労働力が減少し、人間の経済を支える実物的な基盤(人・人工物・自然・社会関係の各種資本基盤)の質を維持するための営み(手入れ)が不足しつつある。

これまでの経済学は物理学のアナロジーにたって、人間による評価の表れとしての市場価格を重視する理論体系を構築した。しかしながら、市場に参加する主体は、実物界のメカニズムを十分に理解しておらず、市場価格を通じた調整のみでは各種資本基盤を十分に「手入れ」することができない。

人間の経済を支える実物的な基盤である「資本基盤」の持続可能性を確保するためには、市場外的な意思決定をつうじて、資本基盤の量を適正に保つとともに、その量に応じた「手入れ」が行われるようにする必要がある。このためには、人間の経済が実物界に支えられていることを再認識する新しい経済学の枠組みが必要となる。

前半では、現在の主流派経済学がどのようにして実物界から離脱する理論体系を構築していったのかを振り返り、実物界を再認識する経済理論としてエコロジカル経済学の考え方などをレビューする。

後半では、エコロジカル経済学の考え方を発展させて、人間の経済を支える資本基盤の持続可能性を確保するための新しい経済理論体系を提示し、政策展開を構想する。

 

目次構成:(上)視座と理念の転換

はじめに

第一章 実物界からの離脱と成長経済への希求

第二章 実物界からの離脱へ至る思想的背景

第三章 エコロジカル経済思想への道程

第四章 実物界から離脱した経済学による環境問題へのアプローチ

第五章 実物を重視した経済学への展開

■知識カードの例:(第五章 実物を重視した経済学への展開)~アイカードブック(iCardbook)は知識カードを編成した電子書籍です。

076 ケインズ経済学と実物界
077 失業率という実物的経済運営指標
078 宇宙船地球号の経済学
079 マテリアル・バランス論(物質均衡論)
080 エントロピー法則と経済過程
081 定常経済論
082 生命系の経済論
083 社会的共通資本
084 エコロジカル経済学の出現
085 エコロジカル経済学の四つの共通ビジョン(1)生態系のサブシステムとしての人間の経済
086 エコロジカル経済学の四つの共通ビジョン(2)持続可能性
087 エコロジカル経済学の四つの共通ビジョン(3)予防原則
088 エコロジカル経済学の四つの共通ビジョン(4)能動的・先取的(proactive)
089 究極の低エントロピーの供給源としての太陽
090 一時的な現象としての指数級数的成長
091 学際的アプローチの必要性
092 成長によるコストとメリットのバランス
093 持続可能な規模という経済運営の目標
094 デイリーの三原則
095 共進化
096 収容能力
097 レジリエンス
098 ストック-フロー資源
099 ファンド-サービス資源
100 デイリーのエコロジカル効率
101 エコロジカル経済学の課題

目次構成:(下)政策展開の経済理論

第一章 基本概念

第二章 市場による決定が行える範囲

第三章 持続可能性を確保するための市場外の判断

第四章 持続可能性を確保するための政策群

■知識カードの例:(第三章 持続可能性を確保するための市場外の判断)~アイカードブック(iCardbook)は知識カードを編成した電子書籍です。

043 市場で決められる価格
044 市場による意思決定の限界
045 リョコウバトの悲劇
046 生態系サービスの人工物による代替不可能性
047 不要物処理価格の設定
048 通過資源価格の決定
049 人工資本基盤価格の決定
050 自然資本基盤価格の決定
051 資本基盤の手入れレベル・環境負荷の抑制レベルの決定
052 ノー・ネット・ロスの原則(1)
053 ノー・ネット・ロスの原則(2)
054 資本基盤管理の方針
055 閾値把握
056 状態監視—不確実性とフィードバック
057 負荷管理—環境負荷の回避・最小化・代償措置の適正水準の確保
058 予防原則
059 攪乱対応—バックアップと区画化
060 生物多様性(biodiversity)
061 適正な手入れ水準の確保
062 資本基盤の存在量に応じた手入れ労働需要の確保
063 ライフサイクル思考の確保
064 源流対策の原則
065 拡大生産者責任原則
066 設計者責任原則
067 人工資本基盤の維持に関する判断
068 自然資本基盤の維持に関する判断
069 市場外的な意思決定を必要とする分野
070 合意形成
071 熟 議
072 熟議の場のデザイン

『なぜ経済学は経済を救えないのか —— 資本基盤マネジメントの経済理論へ—』はアイカードブックの一冊です。

(上)視座と理念の転換
(下)政策展開の経済理論

 

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アイカードブック創刊の狙い | ちえのたね|詩想舎 http://society-zero.com/chienotane/archives/5063

本のネットワーク化 – iCardbook|知の旅人に http://society-zero.com/icard/network

日本人の情報行動の変化と<本>の未来 | ちえのたね|詩想舎 http://society-zero.com/chienotane/archives/7396/#4

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