仲間と自分の知識の差を理解する能力は、仲間をだますことに使われることがある。
エミール・メンゼルは、放飼場にいる二頭のチンパンジーの弱いほうにバナナの隠し場所を教えた。弱いほうがバナナを取ると、強いほうにすぐに奪われてしまう。すると、弱いほうは知らないふりをして、強いほうが離れると大急ぎでバナナを取った。今度は、強いほうが離れていくふりをして、弱いほうが取るとすかさず戻ってきてバナナを奪った。I):山極は、野生のマウンテンゴリラが大好物のキイチゴを見つけたとき、知らんふりをして早足で進み、自分より大きなゴリラが離れた後にこっそりもどってきてキイチゴを独り占めしたのを目撃している。
このように、相手の心を読んで自分に有利の方法を考え出す能力がチンパンジーにはある。
■参考文献
『マキャベリ的知性と心の理論の進化論——ヒトはなぜ賢くなったか』 リチャード・バーン編、アンドリュー・ホワイトゥン編 友永雅巳・小田亮・平田聡・藤田和夫監訳(ナカニシヤ出版、二〇〇四年)
★この記事はiCardbook、『人類の社会性の進化(Evolution of the Human Sociality)(下)共感社会と家族の過去、現在、未来』を構成している「知識カード」の一枚です。
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註
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