歴史における勝ち負けが、知のありかたや文明の優越を示すものではない。現在、資本主義は袋小路にはまり込み、さまざまな地球規模や生命をめぐる深刻な問題に直面している。
現代社会における諸問題は、近代西欧の知の体系や文明の枠組みから生じた。このことを考えると、それらの原因を解明し、新しい社会のあり方を模索するためには、近代西欧の知の体系や文明から距離を置き、それを批判的に検討する必要がある。
結論的に言うならば、知のパラダイム転換をはからねばならないのである。そのためには、農村や国家という閉鎖系から、都市や「共同体」という開放系への発想の転換が求められる。それは、「共同体内倫理」に代わる「共同体間倫理」の構築である。
この点において、イスラーム世界での経験は示唆に富む。イスラーム世界の歴史には、西欧近代を相対化し、「もう一つの社会」のあり方を示唆する理念や生き方がみられるからである。
参考文献:
『文明としてのイスラム―多元的社会叙述の試み』 プロローグ 加藤博(東京大学出版会、1995年)
★この記事はiCardbook、『イスラーム世界の社会秩序 もうひとつの「市場と公正」 Vol.3 基本概念・基礎用語編』を構成している「知識カード」の一枚です。
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