言語障害に関係があるFoxP2遺伝子のアミノ酸配列は二つ、チンパンジーと異なることから、人類が独自に二度突然変異を起こしたと考えられている。ヒトは言葉をしゃべるという新しい遺伝的な改変をともなって誕生したと考えられている。
この遺伝子はネアンデルタール人にもあり、舌骨や声道の形も似ているので、音声の知覚は現代人とあまり変わらなかったと思われる。
しかし、ネアンデルタール人の遺跡からは象徴的な印や装飾品が出てこないので、われわれと同じような言語をしゃべっていたとは考えられない。I):象徴的な印や装飾品が出てこないことから抽象化能力、象徴的思考の欠落が想定されている。象徴的思考には相似を理解し、比喩する能力が必要である。「クマが走るのもウワギが走るのも人間が走るのも、同じ「走る」ことだと解釈すれば、表現は節約でき、伝わりやすくなる。(略)より少ない労力で正確に仲間に情報を伝えることができる。(『家族進化論』第六章・第一節 ホモ・サピエンスの登場)」
■参考文献
『歌うネアンデルタール——音楽と言語から見るヒトの進化』 スティーヴン・ミズン 熊谷淳子訳(早川書房、二〇〇六年)原著二〇〇五年
『ヒトはどのように進化してきたか』 ロバート ボイド、ジョーン・B・シルク 松本晶子・小田亮監訳(ミネルヴァ書房、二〇一一年)原著二〇〇二年
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註
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