脳の増大とヒトの社会性|知活人(chiikibito)

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■[私のお気に入り知識カード]=096 脳の増大とヒトの社会性

https://society-zero.com/icard/437840

脳の増大とヒトの社会性

◎赤ちゃんとミラーニューロンと共感社会◎

生後間もない赤ちゃんはまだ目がよく見えておらず、もっぱら「聴覚」を頼りに外界を把握しています。それが生後6カ月~1歳になると視覚はもちろん、全体の感覚能力が高まり、「共感能力」を育むのにとても重要な時期となります。

この時期、赤ちゃんは親の表情をよく真似しますよね。それが面白くて親も赤ちゃんの様子を真似する形で、相互のコミュニケーションが活発化します。二人とも楽しそう。親は幸せを感じます。実は表情の真似はこのうれしい気持ち、満たされた感覚の、脳内での真似(うれしさや幸せがこみ上げてくるモジュールの活性化)をも引き起こしています。

人間の脳のなかには他者の行為を心的に模倣しているときに活性化するモジュールがあり、ミラーニューロンと呼ばれています。ミラーとは、 他者の動作を見たとき、自分もその動作をしているかのように、つまり鏡のように脳内の神経細胞が活発化することに由来します。

こういった、あかちゃんと親をはじめとする周囲にいる人との間での真似を通じたコミュニケーション過程で、赤ちゃんは、親に自分の情動が「鏡映化(mirroring)」される様を見、自分の情動を再体験します。そして自己への認識を次第に深めてゆきます。

人類は進化の過程でこの機能をさらに磨き、共感という能力に発達させ、人間固有の社会を作り上げてきました。共感とは他人の感情や経験を、あたかも自分自身のこととして考え感じ理解し、さらにそこから自身の意思決定や行動につなげていく能力のことです。

つまり、

共感 = 相手の事情や気持ちを理解し(情感・認識) + そのうえで問題を解決する(意思決定・行動)

この能力が共感なのです。

共感により家族を、クローズであると同時に他の家族に対しオープンにすることができ、家族同士が協調、共同し、衣食住の生活基盤の獲得、維持をすることで、ようやく人類は数万年を生き永らえました。

つまり一方で家族は数人で構成され閉じて(クローズ)いますが、それは見返りを求めない人間関係の集団です。他方、複数の家族同士の間では損得勘定が働くでしょう。つまり見返りを求めるのが、家族を構成単位とする小規模集団、原始共同体の姿。この見返りを求めない家族と見返りを求める共同体を構造的有機体として連結(オープン)する役割を果たしたのが、共感能力だったのです。

第二回目の[私のお気に入り知識カード]=096 脳の増大とヒトの社会性 には、男親も含めた共同保育(今でいうイクメン)、そして捕った獲物を仲間と分かち合う食物分配が、共感社会の生成に重要だったことが語られています。
https://society-zero.com/icard/437840

 

 


■関連する知識カード
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絶対音感で生まれる赤ん坊 https://society-zero.com/icard/787996

 


『人類の社会性の進化(上)「社会」の学としての霊長類学
(山極寿一・本郷峻)』

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