知のパラダイムシフト

「お金をかけずに」と「自動化」 一人出版

※これはインストラクショナルデザイナー、境祐司さんの「ニューズレター」の配信記事。ご本人のご了解をいただき、全文転載させていただいています。

「ニュースレターの移行について/「一人出版社」の短期目標」

Vol.034[クリエイティブエッジ・ニュースレター]号外
配信日:2015年3月30日(月)

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クリエイティブエッジ・ニュースレター
Vol.034[号外]です。

2015年6号目の配信になります。

●ニュースレターの移行について

ニュースレターは、ブレインメールを導入して配信を続けていましたが、コストを(後述する)管理システムに集中するため、やむを得ず、停止したいと思います(本当は継続したかったのですが工面できませんでした...)。

新しいメールスタンドは「まぐまぐ」にしています。
昨年、別件で開設していましたので、そのまま利用します。名前が「クリエイティブエッジ・ビジネス」になっていますが、変更する予定です。
また、サンプル誌が公開されていますが、昨年のテスト版です。

大変お手数ですが、まぐまぐの方で登録していただけたら幸いです。
現在のニュースレターは、そのままでも自動的にデータベースから削除されます。

[新]クリエイティブエッジ・ビジネス(まぐまぐ) http://www.mag2.com/m/0001637357.html

[現在](ブレインメール) http://bit.ly/1ERs2Ps

ほんとにやむを得ずの停止で、ブレインメールは、配信も安定していて、セキュリティ体制もしっかりしていますので、お奨めのサービスです。ほんとに残念。 http://www.blaynmail.jp/company/


 

●一人出版社の短期目標:

オープンソース「Moodle(ムードル)」をベースにした購入者(読者)向けの環境づくりと実現のための活動

※以下は、今朝、Facebookページ(電子書籍メディア論)に投稿した記事の詳細版になっています(情報を追加しています)。
20日に、一人出版社 Creative Edge School Booksを正式スタートして、10日経ちました。

Creative Edge School Books http://design-zero.tv/school/booklist/

いくつか協業のお話も頂き、「一人」ですが、(音楽やアート業界の個人レーベルのように)コラボレーションワークも増えていきそうです。
先週、短期目標を見直したところ、5月末くらいから軌道に乗れそうな感じですが、至急改善しないといけない問題も明らかになりました。

あと、何やら..予想外の健康上の心配事も出てきて(実はこれが一番のきっかけです)、少々焦り気味ではあるのですが、力を発揮できるうちにやり終えたいと思っています。
まず、電子出版のマーケティング活動に力を入れていかないと売上げを伸ばせないのですが、ほぼ「手作業」のため、このペースだと、厳しい結果になる可能性が高く、新しい仕組みが必要になりました。

昨年から、出版社には、「コンテンツ管理システム」と「マーケティングシステム」は必須だと考え、コンテンツ管理システムの方は進めていたのですが、秋以降、それどころではない状況になり、止まっていました。
マーケティングシステムとは、HubSpotやAdobe Marketing Cloudのような、マーケティングツールの統合環境です。

これらはエンタープライズがターゲットで、とても個人が使えるものではありませんが、「デジタル」専門の出版社にとって、今後「Webマーケティング」なしでは、まず事業継続できないといっても過言ではありません。

HubSpot http://www.hubspot.com/
Adobe Marketing Cloud http://www.adobe.com/jp/solutions/digital-marketing.html

個人レベルに落としたマーケティングシステムが必要です。
この後、お話するオープンソースのシステムやGoogleやYahoo!などが無償提供しているツールなどを組み合わせて実現します。

Creative Edge School Booksの現状把握と対応策は以下のとおりです。

■現在の問題点:

(1)電子出版の企画は、購入者(読者)からの意見、要望、ベータテスト、ヒアリングが生命線になっていますが、まったく自動化できないため、最も「一人」の限界を感じるプロセスになっています。

メールやSNSのDM、グループウェアなど、コミュニケーションの手段が複数あり、統合が必要。

(2)一人出版社では、リリースした電子書籍をウェブサイトのように更新して長生きさせようと考えています。

現在は「フリーダムパブリッシング」の追加版を2冊アップ、あと2冊を準備中。「電子教科書のUXデザイン」の改訂版を準備中です。

1冊の電子書籍に複数のバージョンがつくられ、追加版も足されますので、もっと分かりやすい購入者向けのシステムが必要です。

(3)自前のストアで電子書籍データを販売していますが、利便性を向上させる必要があること(購入後、そのままブラウザーで読めるようにしてほしい、といった要望を多数頂いている)。

「EPUBの読み方」などのヘルプを充実すればよいと思っていたのですが、初めて電子書籍(EPUB)に触れる方もいらっしゃるため、もっとユーザビリティの改善が必要だと判断しました。

■対応策:

利便性の向上

まず、利便性の向上については「Readability」のような環境をつくりたいと思っています。

ブラウザー上のページがクリーンで、Kindleで読みたい人はSend to Kindleボタン、EPUBで読みたい人はEPUBダウンロードボタンが付いています。

電子書籍を購入後、このようなシステムであれば、そのままブラウザーで読めて、KindleやEPUBで読みたい人にも対応できます。

(参考)Readability
https://readability.com/
https://readability.com/topreads/
※Readabilityを使うわけではなく、これに近いイメージの環境です。

購入者(読者)向けのシステム

購入者(読者)からの意見、要望、ベータテスト、ヒアリングの結果をまとめたり、電子書籍の複数のバージョン、追加版をわかりやすく提示するシステムとして、オープンソースのLMS「Moodle(ムードル)」を使いたいと思っています。

Moodleは、学習管理システムですが、一人出版社のニーズを満たしていることがわかりました。

Moodle https://moodle.org/

eラーニングのシステムとしては世界中で使われていて、コミュニティも大きいので、学校機関以外でも、事例がありました。

実は「Open edX」も候補だったのですが、リソースがまだ少ないので、今回は見送りました。なかなか魅力的なLMSです。

技術協力しているGoogleのMOOC講座が、Open edXを採用しています。国内では、大阪大学が採用していて、教員向けのプラットフォームとしても活用しています。

Open edX https://open.edx.org/


 

●Creative Edge School Booksでの活用内容:

・電子書籍を購入した方に専用ページ(Moodle内)を提供

・新バージョンや追加版、改訂版をわかりやすく提示

・質問や要望、意見を専用ページから投稿できるように

・購入した電子書籍に関する有益な情報を購入者(読者)同士で共有可能にする

・オンライン講座などのコンテンツをリリースした場合、お試し版などを専用ページからアクセス可能にする

・新しい電子書籍のベータテストを専用ページで告知

・電子書籍のベータテストも専用ページ(Moodle内)で実施

最初から完璧なものはつくれませんので、優先度を決めて、順番に機能を追加できればと思います。

フリーダムパブリッシングの中では、「自分のiTunesを作りたい」と書きましたが、Moodle(バックエンド) + Readability(フロントエンド)がかなり近いイメージです。

■今日から

準備を進めるために、費用について考えなくてはいけないのですが、可能な範囲で、絞っていくと、昨年実施したプロモーションのお手伝いが有力だと判断(大きなお金ではないため)。

昨年、2ヵ月間ほど、電子書籍のプロモーションページ作成のキャンペーンを実施しました。多くの方とサイボウズでやり取りしながら、作業をさせて頂き、至らない点もありましたが、なんとかこなすことができました。

前回同様、期間内でこなせる件数をそれほど増やせないため、難しい部分もありますが...少しでも前進するために決めました。

引き続き、やり取りはサイボウズを使いたいのですが、Moodleで読者向けの環境をつくる準備も兼ねたいと思っています(この部分はあくまで裏側のことですが)。

昨年の告知ページ http://design-zero.tv/college/production/
※過去の記録として残してあるページです
※今回はさすがにこの価格では難しい....(この時はまだ余裕がありました)

●この時のキャンペーンで得たこと:

・ランディングページのワークフローが構築できた
 >これは現在の電子書籍ページ作成に反映されています

・依頼された方とのやり取りでグループウェアに何が必要かわかった

とにかく、このキャンペーンをやらなかったら、電子書籍すべてにランディングページを作成するなんて考えなかったと思います。とても貴重な財産になっています。

●今回

今回は、ランディングページのワークフローが変わり、レスポンシブが標準になりました(前回は別ページの振り分け)。専用ページの作成だけではなく、プロモーション方法の提案も兼ねて、としたいと思います。
前回、書籍、電子書籍以外の依頼もありましたので、特に書籍に限らず、可能な限り対応できればと思います。

詳しい情報をお送りしますので、FacebookのDMでもメール( ebookcast@gmail.com )でもかまいませんので、お気軽に送ってください。

慌しい状況が昨年からずっと続いていますので、「フリーダムパブリッシング」は、完結しないだけでなく、さらに追加版が増えていきそうです。手塚治虫先生の「火の鳥」みたいに。

Moodleをどのように利用できるのか、(開発費の工面次第ですが...)着手が可能になったら、報告いたします。
昨年からずっと「お金をかけず」に進めていることが、もしかしたら役立つ情報になるかもしれませんので、今後も定期的に報告していきたいと思います。

「一人出版社」スキームの肝は、発想(企画)や取材活動、編集作業以外を可能な限り自動化することなのですが、同時に、事業を継続するためのマーケティング活動、読者のためのサービス向上(軽視していました...)も先送りできず、もうひと踏ん張りすることにしました。

上位目標のオープンエデュケーションにもはやくつなげたい。昨年末の機材処分で、まだ映像コンテンツが作れないのですが、はやく軌道に乗せて、映像編集が可能な環境も整えたいですね。

本当は、マイペース「一人」出版が理想ですが、何やら自分の人生にはハッピーエンドもバッドエンドも同居していて、目まぐるしく動いているので、悔いが残らないように前倒しでいきます。

無茶できるのも長い人生でそう何回もないと思いますし、もうさすがに最後の無茶でしょう.....

蟻の思いも天に昇る、です。

境祐司
ebookcast@gmail.com

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