デジタルコンテンツでも「外に出る」リアルプロモーションが重要

※これはインストラクショナルデザイナー、境祐司さんの「ニューズレター」の配信記事。ご本人のご了解をいただき、全文転載させていただいています。


一人出版社のニュースレター「Vol.02」です。

昨日は、テスト配信を兼ねていましたが、今日から記事を掲載いたします。

本日は、リアルプロモーションについて書いてみたいと思います。
デジタル専門の一人出版社なのに、なぜネットよりリアルを優先したのか、振り返ってみます。

一人出版社には、営業部署はありません。「一人」でやっていますので、当然なのですが、営業する人がいないということは、「コンテンツを売ってくれる人」がいないことを意味します。

個人でも容易にデジタル本を作成して、Kindleや楽天koboなどのストアで販売することが可能になりましたが、商品を置いただけでは買ってもらえません。これは、デジタル本に限ったことではなく、音楽や映像など、他のデジタルコンテンツでもまったく同じです。

その存在を多くの人に伝え、関心を持っていただき、納得して買ってもらうには、広告代理店がやっていることの数万分の一でもかまわないのですが、とにかくプロモーション活動が必要です。

ただし、継続的に広告費を投入できず、媒体力、影響力もない個人が、FacebookやTwitterで宣伝しても、届く範囲は限定的で、状況はあまり変わりません。ネットで偶然(見つけてもらう)を待つよりは、外に出てリアルプロモーションに力を入れたほうが確実に売れます

一人出版社では、「習得本」を手掛けていましたので、「訪問ワークショップ」がプロモーションとしても機能し、数回の口コミも起こしてくれました。

もし、「ソーシャルメディアで何とかなる」と頑張っていたら、思うようにコンテンツが売れず、リソースを使い切ってしまい、間違いなく活動停止状態に陥っていたと思います。

いくらウェブの技術が進歩して、最先端のビジネスツールが利用可能になっても、コンテンツを「買ってもらう」ことは、簡単になりません。
今後も、状況はあまり変わらないでしょう。

だからこそ、誰にでもチャンスがあるのだと思います。

技術進歩で解決するなら、世の中、成功者で溢れかえってしまいます。
マーケティングのプロ集団(広告代理店)でさえ、商品を売ることができず、失敗することがあるのですから。

電通の石井直(代表取締役社長執行役員)さんがインタビューでこんなことを言っています。

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まず申し上げたいのは、営業という仕事の定義そのものが変わったということです。
(略)
私は、営業の仕事とは「顧客が直面する課題の解決」であると考えています。

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[インタビュー]現場の最前線で「仕事を創る」ことの醍醐味 電通の営業はチームでモチベーションを上げる/Harvard Business Review 2015年8月号より

営業の仕事とは「顧客が直面する課題の解決」。
何か悩みを持っていたり、一刻も早く解決したい問題を抱えている人の多くは、必死になって情報を集めています。

一つ例を示しましょう。

4月21日、Googleは、モバイルフレンドリーアップデートを実施しましたが、この数週間前から、問い合わせが急増しました。
「来週までに、うちのサイトをモバイル対応にしたい」「Adobe Museというソフトを使えば簡単に作れるのか?」といった内容です。

モバイルフレンドリーアップデートに関する(多少煽り気味の)ニュース記事を見て、大慌てでモバイル対応に動き出した中小企業が多かったようで、一人出版社にも、ランディングページ経由で普段の数倍の問い合わせがありました。

以下が検索上位に表示されたページです。

Q&A Googleのモバイルフレンドリーテストで不合格になります。どうすればよいでしょう?
http://design-zero.tv/school/booklist/qa_01.html#qa-muse-03

「顧客が直面する課題の解決」の一例

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モバイル対応は簡単ではないらしい。
我が社には、ウェブ制作できる人間がいない。
外注できる予算も時間もない。
どうすればいい?

どうやら、Museというソフトは専門の知識がいらないらしい。
しかも、モバイル用のページも簡単に作成できるようだ。

よし、情報を探してみよう。
あった、これだ。

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これが「響いた」「刺さった」という状態です。

いくら広告費を投入して、情報をたくさんの人に届けられても、人の心に「響かないと」もしくは「刺さらないと」、買ってもらえません。

一人出版社では、以下のデジタル本を「緊急出版」しました。

Museでスマートフォンページを作る手順
モバイルフレンドリー対応版
Adobe Muse CC 2014 ビジネスガイドブック
http://design-zero.tv/school/booklist/
※ページ下部の「Additional Version」セクションに掲載されています

一般販売はせず、読者向けに無料で提供しましたが、かなり反響がありました。

このデジタル本がきっかけで、訪問ワークショップも増えました。
※もちろん、「Museだと簡単に作成できる」の「簡単」というのは、デザインツールなどを仕事で使っているデザイナーであれば、という条件付きですから、そうでない人の場合は、学習が必要なので時間がかかります。

まとめてみます。

Googleのモバイルフレンドリーアップデートが実施されるという情報を得る
・読者向けに情報ページを作成し、公開
・ネットメディアも、モバイルフレンドリーアップデートに関する記事を公開し始める
・モバイル対応したい中小企業から、検索経由で問い合わせが急増
・読者向けに「緊急出版」
・さらに問い合わせが増え、訪問ワークショップも増える
・読者向けの緊急出版だったので、デジタル本の方も売れ始める

この場合は、モバイルフレンドリーアップデートというイベントの恩恵が大きく、運よく「見つけてもらえる」状況になりましたが、こんな機会は滅多にないと思います。

ただ、小さくてかまわないので、こういった「流れ」を生み出していかないと、次から次へと売れていくことはありません。

以下のような疑問が出てくると思います。

・個人でも同じことができるのか?
・「外に出る」リアルプロモーションで、具体的に何をやればいいのか?

次号は、もっとパーソナルなレベルで見ていきましょう。

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■デジタル本・長期プロジェクト

医療・ロボティクスをテーマにしたコミック「長期プロジェクト」
取材は今月末からですが、ティーザー・シングルページを公開しました。
少しずつ、プロモーションページに変化していきます。
http://expub.businesscatalyst.com/

※マーケティングプロセスは、「一人出版社 全記録」の購入者マイページと共有しています。

投稿日:2015年7月22日(水曜日)

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Creative Edge School Books
http://design-zero.tv/school/booklist/