●「学校パソコン、もう返したい」先生とデジタルで変わる生徒


「まず、大切なのは、教師が適切なデジタル・リテラシーを身につけることである。デジタル・リテラシーとは

・自分の目的合ったデジタル・コンテンツを見つけだし、使えること
・目的に応じて、自分でデジタル・コンテンツを作ることができること(たとえば、ブログを作ったり動画を作成するなど)
・デジタル機器やアプリを使って、コミュニケーションや情報交換ができること

だとわれている。

教師が常に新しいアプリケーション・ソフトに精通している必要はない。ただ、授業の目的に応じて、相応しいコンテンツを自信を持って使えるだけの、最低限の知識とスキルは不可欠である。(バトラー後藤裕子 『デジタルで変わる子どもたち』)」


 

■施政者側のGIGAスクール構想集大成の年

2021年度には98.5%の自治体などで義務教育段階における一人一台端末の整備が完了しました。来年、2024年は学習者用デジタル教科書本格導入が段階を追ってスタート。デジタル庁の教育データ利活用ロードマップによると施政者側にとって、今年、2023年がGIGAスクール構想集大成の年になる模様です。各種教育分野のプラットフォームの社会実装の開始や、オンライン上で学習やアセスメントができるプラットフォーム「文部科学省CBTシステム(MEXCBT:メクビット)」の全国展開が予定されているからです。

・MEXCBTの大まかな利用方法

MEXCBTとEdTechの連携で本格的な教育DXへ

しかし教育の現場はこれからがむしろ本番。デジタルと紙とのハイブリッドな授業とはどんなカタチであるべきか、模索が始まっていますね。

文科省ではデジタル教科書を令和6年度から段階的に導入する。小学校5年生から中学3年生に、まずは英語で取り入れ、その後、算数・数学で利用することとしている。報告では、デジタル教科書の環境に慣れるまでには数年は必要だとして、当面はデジタルと紙を併用する考えを改めて示した。
デジタル教科書、併用環境の整備を 中教審WG

 

■デジタルで変わる生徒の側

ハイブリッドな授業の工夫に四苦八苦する先生方を尻目に、子どもたちが生活をしている生活環境そのもののデジタル化の進展と、そこに対する生徒たちの柔軟な姿には目を見張るものがあります。

なんと小学生でもタイピングが大人顔負けのレベルのようですし(情報活用能力調査(令和3年度実施)の速報結果)、中学生の検索エンジンでの調べ物はすっかり定着しています。

さらにこういったことを背景に、好きな教科が作れるとしたら、どんな教科を希望するかという質問への回答はこんな具合になっています。

・好きな教科が作れるとしたら
一位:「PC・プログラミング」/二位:「ゲーム・eスポーツ」(38件)/三位「漫画・イラストを描く」(21件)

(中学生は勉強して分からないことがあったら「インターネットの検索エンジンで調べる」~子どもの「好き」に関するアンケート調査 光村図書 https://www.kknews.co.jp/news/20221216yt01

ちなみに子どもたちも使う公共図書館への電子図書館導入は、人口ベースでほぼ5割を超えるとところまできました。これを受け、文科省は学校の児童生徒に対し公立図書館の電子書籍貸出サービスのIDを一括で発行するような工夫を奨励しています。

そうした図書館の様子も含めた、ハイブリッドな授業に関わる知恵クリップ、集めてみました。

 

■知恵クリップ

●本は“スマホ”で読むよりも“紙”の方が「読解力」が高まる!?調査した研究者に理由を聞いた https://www.nippon.com/ja/news/fnn20220305324972/
「“なぜ”電子機器を使用すると、読解問題の成績が低下するのかというテーマで、呼吸と脳の活動から検討しました。

研究の結果として、“スマホを使用した読書”は“紙の本を使用した読書”と比べ、ため息(深い呼吸)の回数が少なくなり、前頭前野(脳)の活動量が増加し、記憶や読解に関する設問の正答率が低下しました。」

 

●「電子書籍」と「紙の本」どっちがいいか 脳科学の専門家の見解 https://friday.kodansha.co.jp/article/141092
「“アウトプット”しなければ、紙の本でも電子書籍でも記憶に残らない

紙の本に付箋を貼っておけば、大事なことがどこに書いてあるかひと目でわかる。電子書籍も付箋機能や検索機能がついているが、

「私は紙の本に慣れているから、紙のほうが使いやすいけれど、電子書籍を使いこなせる人なら、電子書籍のほうが便利かもしれません」」

・「紙の本」と「電子書籍」の比較

「電子書籍」と「紙の本」それぞれのメリットを整理してみると/『インプット大全』⑪

 

●学校パソコン、もう返したい 教師の本音「紙と鉛筆で」 https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUF1452J0U2A110C2000000/
「一部の若い教師が関心を寄せても、学年や教科で足並みがそろわなければ「保護者から『不公平』というクレームがくるかもしれない」といった組織の論理が優先されがちだ。山本さんは「結果的にパソコン授業をやりたくない先生やデジタル機器を扱うのが苦手な先生に合わせる流れができてしまう」と実態を明かす。」
・世界最低の、日本の学校教育のデジタル活用

(1)HaruhikoOkumura:「学校パソコン、もう返したい 教師の本音「紙と鉛筆で」https://t.co/0osClqKgcU(無料会員で読める)https://t.co/tQRJCtkgyK」/Twitter

 

●小学5年生「1分間の入力文字数49文字」、2015年文科省調査の8倍以上 https://ict-enews.net/2022/09/21edu-net-3/
1分と10分の違いがあるとはいえ、すでに小五で社会人の標準レベルを達成している、「タイピングによる入力文字数」。

・第1回 全国統一タイピングスキル調査

社会人が一般的に履歴書に記入してよい資格のレベルが、日本語ワープロ検定2級から、つまり「10分で500文字以上」だといわれているからだ。(タイピング速度はどのくらいが良いのか調べてみました

 

●中学生は勉強して分からないことがあったら「インターネットの検索エンジンで調べる」~子どもの「好き」に関するアンケート調査 https://www.kknews.co.jp/news/20221216yt01
「小学生の1位は「家の人や周りの大人に聞く」(72.2%)なのに対し、中学生の1位は「スマートフォン・インターネットの検索エンジンで調べる」(69.1%)と、結果がはっきりと分かれた。中学生の1位の回答は、2位以下の回答に大きく差をつけており、中学生の学習環境に検索エンジンが浸透していることが見て取れた。」

 

●東京書籍、「クラウド版デジタル教科書」共同実証研究の報告書を公開 https://ict-enews.net/2022/12/29tokyo-shoseki/
「英語科においては朗読音声コンテンツの重要性が高い」、また「教科書のどの部分を使用したかを表すヒートマップでは、小学校5年生社会下巻では、図版やコラムが多く、小学校6年社会歴史編では本文が多いなど、教科や学年による活用のされ方の違いが明らかになった。」

 

●ICT学習アプリ「ClassPad.net」にて電子書籍コンテンツを発売開始 https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000258.000040622.html
「旺文社・研究社・三修社・東京書籍・NHK出版の定期試験対策や語学・探究学習等に役立つ電子書籍164コンテンツの発売を開始します。自主学習の際に、自分のレベルに合わせた参考書を活用して、「ClassPad.net」のノート上でメモをしながら学習が可能です」

 

●GoogleforEducationGIGASchool学校の先生向け https://giga.withgoogle.com/educators/
「先生方にとって、使いやすく安全で、効率よく管理・測定・実用化できるプラットフォームとサービスをご用意しております。」

●いらすとや風のイラストを生成する「AIいらすとや」をリリース https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000002.000113219.html
「「AIいらすとや」は、AIでいらすとや風のイラストを生成することができるAIモデルです。高品質な画像を自由に生成できるAIピカソの画像生成技術を活用し、いらすとやのかわいいキャラクターたちを学習した専用のAIモデルを開発することで、テキストを入力するだけで、誰でもほしいと思った状況のいらすとや風の画像を無料で生成できるAIモデルを実現しました。」

 

●著作権教育教材『すごくわかる著作権と授業』
https://axies.jp/_media/2022/10/20230111_sugowaka35.pdf
「生徒:データは著作物じゃないのに、データベースは著作物なのか。

先生:例えば、他のデータベースでは調べられないような情報を検索できたり、同じ情報を検索するのでもキーワードの選定などに工夫があったりする場合に著作物性が認められることがあります。」

大学の授業における、先生と学生のためのイラスト・漫画風「著作権」講座。

 

●元国立国会図書館司書が書いた「調べもののバイブル」が飛ぶように売れている理由 https://diamond.jp/articles/-/315425
「利用者が自力で調べることができるようにサポートするまでがレファレンス司書の仕事です。実際、アメリカの図書館では、それが常識になっています。

ところが日本では、レファレンスサービスという文化がアメリカから入ってくるときに、レファレンスとは「調べもの代行」であるという誤解が起きてしまいました。

理由のひとつは、国会議員に対してレファレンスサービスを行う部署が国会図書館内に設けられたのですが、議員というのはおそろしく多忙な人々なので、結果的に「代行」にならざるをえなかったからです。これは、現在に至るまでそうです。」

・二回:元国立国会図書館司書が教える「調べものが速い人と遅い人」ちょっとした行動の差 https://diamond.jp/articles/-/315430
・三回完:元国立国会図書館司書が教える「最高の図書館」ベス5 https://diamond.jp/articles/-/315448

 

●電子図書館(電子書籍サービス)実施図書館(2022年10月01日)
https://aebs.or.jp/pdf/E-library_introduction_press_release20221001.pdf
電子図書館を利用可能な人口規模はすでに過半を超えている。

日本の人口(2020年国勢調査、全体12,614万人)と、電子図書館導入の基礎自治体の合計人口数を比較すると、電子図書館導入の基礎自治体の人口数合計は6,478万人となります。

この結果日本の全人口と電子図書館利用可能人口を比較するすると51.4%となり、日本の全人口の約半数は、自治体の電子図書館を利用できることになります。」

・自治体数ベースの都道府県別導入率
https://aebs.or.jp/pdf/Electronic_Library_Service_Implementation_Library_Prf_20221001.pdf

 
●紙の教科書とデジタル教科書のベストミックスを求めて【学校図書館図書等の整備・拡充について】 https://www.kknews.co.jp/news/20221209yt01
学校図書館図書の整備について、「選定基準・廃棄基準を策定し、古くなった本を新しく買い替えることを促進する。(略)学校司書については、これまで約1.5校に1人だったのが、約1.3校に1人とするため総額約1215億円の予算を講じて配備拡充を図る。」

●図書館市場は縮小中…図書館や教科書の市場動向 http://www.garbagenews.net/archives/2386813.html
日販の「出版物販売額の実態」最新版(2021年版)から。
各種図書館による書籍購入額の推移。全体として右肩下がりなものの、とりわけ大学図書館の下落、購入圧縮の様子が見て取れる。
・図書館の市場規模推移

 

●円安影響千葉大学図書館で海外雑誌の購読取りやめも https://www3.nhk.or.jp/shutoken-news/20221216/1000087667.html
円安が大学の研究環境にも大きな影を。

「予算に限りがある中で購読の維持は非常に大変です。無料で見られるオープンアクセスの論文を推進しながら、より有利な契約を検討するなどしていきたい」

●月給9万円台、搾取される図書館司書の窮状 非正規雇用化の背景に自治体のコスト削減 https://biz-journal.jp/2023/01/post_330784.html
「都立や県立、市立の図書館といった公立図書館の職員は公務員になるわけですが、正規職員と非正規職員に分かれます。そして、実は図書館司書の資格がなくても、正規・非正規どちらも司書になることは可能なんです。また、正規職員で司書資格の所持者は少なく、逆に非正規職員のほうが司書資格の所持者の割合が高いという、逆転現象が起きている図書館も少なくありません」


“手取り9万8千円” 公的機関で働いていても不遇な待遇「官製ワーキングプア」と呼ばれる非正規図書館員の訴え