サピエンスとネアンデルタール

サピエンスの集団もネアンデルタールと同じく、最初は小集団で暮らしていた、おそらく共鳴集団で音楽的なコミュニケーションを用いて、それほどシンボルを用いて情報交換をする必要はなかったであろう。

しかし、多産の生活史戦略によって人口が増え、寒冷・乾燥の気候によって人々が食物を求めて移動するようになると、他集団と接触する機会が増え始めた。

そこで、シンボルや言葉を使って会話をする重要性が増し、その能力の差によってネアンデルタールはしだいに数を減らしていったのではないかと考えられている。サピエンスの利点はより大きく複雑な社会を作り、頻繁に人々が移動できた点にあったに違いない。それが物と人の交流を促進し、技術刷新をもたらしたのだ。


■参考文献
『歌うネアンデルタール——音楽と言語から見るヒトの進化』  スティーヴン・ミズン 熊谷淳子訳(早川書房、二〇〇六年)原著二〇〇五年

『家族進化論』第六章・第一節 ホモ・サピエンスの登場  山極寿一(東京大学出版会、二〇一二年)

関連知識カード:Fox P2遺伝子と言語能力

★この記事はiCardbook、『人類の社会性の進化(Evolution of the Human Sociality)(下)共感社会と家族の過去、現在、未来』を構成している「知識カード」の一枚です。

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