記号接地問題と人工知能(2)

現実の多様な可能性の前には、記号はいつも小さな毛布のように現実をはみ出させてしまう。つまりさまざまな言葉があるが、どんなに記号を尽くしても、現実のすべてを表現することはできない。これを記号接地問題と言い、記号の脆弱ぜいじゃくさを示す言葉です。

記号を用いる人工知能は、記号をたくさん使えば使うほど、そのずれの集積に悩まされることになります。たとえばロボットに椅子を判定させても誤りが多い。人工知能は、記号の意味を理解しないので、記号の操作だけでは誤差が集積するばかりなのです。※I):「記号接地問題を考えることは、人間にとってコミュニケーションとは何なのか、ひいては人間にとって言語とはどのような存在なのか、という問題を考えることにつながる。(略)そもそも人間はどのようにして言語を習得しているのか、言語を用いてどのように知識の体系を構築しているのか、といった人間のコミュニケーションの根幹に位置するたくさんの興味深い問題群を考えることにもつながる。」(引用:安西 祐一郎・今井 むつみ(編『言語と身体性』 岩波書店、二〇一四年)


■参考文献
人工知能のための哲学塾』 第三夜・コラム シンボルクラウディング問題(記号接地問題)  三宅 陽一郎 二〇一六年

言語と身体性』  安西 祐一郎・今井 むつみ(編 二〇一四年  [編集部]

★この記事はiCardbook、『<人工知能>と<人工知性>: —— 環境、身体、知能の関係から解き明かすAI—— 』を構成している「知識カード」の一枚です。

人工知能と人工知性
人工知能と人工知性

アイカードブック(iCardbook)

 

 

   [ + ]

I. :「記号接地問題を考えることは、人間にとってコミュニケーションとは何なのか、ひいては人間にとって言語とはどのような存在なのか、という問題を考えることにつながる。(略)そもそも人間はどのようにして言語を習得しているのか、言語を用いてどのように知識の体系を構築しているのか、といった人間のコミュニケーションの根幹に位置するたくさんの興味深い問題群を考えることにもつながる。」(引用:安西 祐一郎・今井 むつみ(編『言語と身体性』 岩波書店、二〇一四年)