柄谷の議論は、一見きわめて魅力的なものだ。先述したグローバル資本主義の問題を、もし柄谷のいうアイデアによって克服することができるとするなら、それは未来世界の大きな希望である。
しかし、「贈与」が基本的な交換様式であった「未開社会」においてはいざ知らず——いや、未開社会においても、戦争の全面放棄が永続化することはあり得なかった——現代において、戦争放棄を一斉に企てる、柄谷の言う「世界同時革命」はいったいどれほど現実的な主張なのだろう?
■参考文献
『サピエンス全史 文明の構造と人類の幸福』 ユヴァル・ノア・ハラリ 原著二〇一一年
『家族進化論』 山極 寿一 二〇一二年[編集部]
『「自由」はいかに可能か――社会構想のための哲学』 第六章・第三節 交響圏と遊動性 苫野 一徳 二〇一四年
★この記事はiCardbook、『自由の相互承認 —— 人間社会を「希望」に紡ぐ —— (下)未来構築の実践理論』を構成している「知識カード」の一枚です。
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