状態・事実論的アプローチの根本問題

状態・事実論的アプローチには根本的な問題がある。

いわゆる「存在」(事実)から「当為」(べき)を導出する誤りに陥っているのだ。※I):コノリーも、テイラーの思想について次のようにいっている。「それは、あるときには道徳的な『べきである』となるし、別のときには論理的な『はずである』となる。また別のときには、道徳的な『べきである』が暗黙のうちに論理的な『はずである』であるかのように扱われる場合もある」(『アイデンティティ\差異』 第四章 悪の責任 (岩波書店、一九九八年))。

「存在」(事実)から「当為」(べき)を導出するものとしては、たとえば次のような典型的な例が挙げられる。

凶悪犯罪者の脳にはある共通性がある、したがって、犯罪者脳の子どもは若いうちから隔離あるいは矯正教育を施されるべきである。

■参考文献
『アイデンティティ\差異―他者性の政治』  ウィリアム・E.コノリー 原著一九九一年


★この記事はiCardbook、『自由の相互承認 —— 人間社会を「希望」に紡ぐ —— (上)現状変革の哲学原理』を構成している「知識カード」の一枚です。
  

 

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I. :コノリーも、テイラーの思想について次のようにいっている。「それは、あるときには道徳的な『べきである』となるし、別のときには論理的な『はずである』となる。また別のときには、道徳的な『べきである』が暗黙のうちに論理的な『はずである』であるかのように扱われる場合もある」(『アイデンティティ\差異』 第四章 悪の責任 (岩波書店、一九九八年))。