記号接地問題と人工知能(1)

記号主義による人工知能構築の最大の課題はThe Symbol Grounding Problem(記号設地問題)です。「シニフィアン/シニフィエ」は人間の精神内部の対応の話でした。一方で記号接地問題は、現実の環境と記号の対応の問題です。

記号接地とは、現実の環境の一部が記号と対応されることです。※I):例えば、「椅子」という言葉を四つの足があって腰を下ろせるものと定義しても、それが一個の独立した椅子とは対応できるが、では観覧車の中のソファは椅子なのか、椅子と言っても折り畳まれた椅子は椅子なのか、大きなゴムボールのようなものは椅子と言っていいのか、現実の多様な可能性の前には、記号はいつも、小さな毛布のように現実をはみ出させてしまうのです。


■参考文献
エージェントアプローチ人工知能 第2』  Stuart Russell ・Peter Norvig 原著二〇〇三年

言語と身体性』  安西 祐一郎・今井 むつみ(編 二〇一四年

ビッグデータと人工知能 - 可能性とわなを見極める』 西垣 亘 二〇一六年

ゲーム、人工知能、環世界 考える存在から経験の総体へ、AIのための現象学的転回」 三宅 陽一郎 『現代思想』 2015年12月号 特集=人工知能 青土社 二〇一五年

★この記事はiCardbook、『<人工知能>と<人工知性>: —— 環境、身体、知能の関係から解き明かすAI—— 』を構成している「知識カード」の一枚です。

人工知能と人工知性
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I. :例えば、「椅子」という言葉を四つの足があって腰を下ろせるものと定義しても、それが一個の独立した椅子とは対応できるが、では観覧車の中のソファは椅子なのか、椅子と言っても折り畳まれた椅子は椅子なのか、大きなゴムボールのようなものは椅子と言っていいのか、現実の多様な可能性の前には、記号はいつも、小さな毛布のように現実をはみ出させてしまうのです。