生物が視るもの

 

知能には意識的な領域と無意識の領域があります。

たいてい我々が「高い」知能だと思っている推論能力は意識的な領域にあります。

しかし、この世界を解釈しているのは実は無意識の知能なのです。無意識は、環境における身体の状態を常に監視し、そこから得た情報を解釈して意識に渡す役割を果たしています。I):つまり、我々が実際に見ている世界、実はそれは、無意識によって解釈された世界。意識は人間の感覚器官からはいってくる記号をすべて受け止めることができません。無意識の中で、さまざまなアナログな信号が記号(シンボル)へと変換され、世界を、今を、理解しているのです。

それが、人間の眼が「見る」ことと、カメラの「視る」の違うところです。カメラはすべての画素の情報を取得しますが、人間の眼は自分の身体や能力に応じて必要な情報が無意識で取捨選択、さらに変換され意識に届くのです。

■参考文献
無意識の構造』  河合 隼雄 一九七七年
人工知能のための哲学塾』 第二夜 ユクスキュルと環世界  三宅 陽一郎 二〇一六年
改めて知りたい、人工知能とは何か?:新刊『人工知能のための哲学塾』第零夜(前編)」
三宅陽一郎 二〇一六年

★この記事はiCardbook、『<人工知能>と<人工知性>』を構成している「知識カード」の一枚です。

人工知能と人工知性
人工知能と人工知性

 

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I. :つまり、我々が実際に見ている世界、実はそれは、無意識によって解釈された世界。意識は人間の感覚器官からはいってくる記号をすべて受け止めることができません。無意識の中で、さまざまなアナログな信号が記号(シンボル)へと変換され、世界を、今を、理解しているのです。