Baasあるいは「出版」からの解放|「読み放題モデルってどうなのよ」手元メモ その2

1.もうひとつ、注意したいこと。Baas(Books as a service)

2018年4月24日のJEPAセミナーは「 『<インターネット>の次に来るもの』から読む未来」だった。 http://www.jepa.or.jp/sem/20180424/

『<インターネット>の次に来るもの』は、「リンクとタグは過去50年で最も重要な発明」といったネットの本質についての理解を踏まえ展開されるメディア論、デジタル世界をもっとも深く理解するビジョナリーとして評価されているケヴィン・ケリー氏の最新著作。氏は「ワイヤード」の元編集長。またスティーヴン・スピルバーグ監督の映画「マイノリティリポート」では、未来世界のアドバイザーを担当した人物。

(マイノリティ・リポートの世界が現実に?独で犯罪予測システムの導入検討 https://irorio.jp/daikohkai/20141204/184075/

その第五章(Accessing)にこういう記述がある。

アマゾンの創業者、ジョフ・ベソスが2007年に初めてキンドルの端末を紹介したとき、それはプロダクトではないと主張した。そうではなく、読むものへのアクセスを売るサービスだと言うのだ。その話はその7年後にアマゾンが、約100万冊の電子本を読み放題にするサービスを開始したときに、よりはっきりしたものになった。

 

Books as a service(Baas)。「サービス」としての「本」という視座。

それではBooks as a service(Baas)とは何だろう。そのヒントは、2017年末のパネル討論「今年の電子出版トレンド」にある。

 

2.「出版」からの解放

2017年12月19日、JEPA(日本電子出版協会)恒例の電子出版アワード選考会が行われ、これまた季節行事になった感のある、パネル討論「今年の電子出版トレンド」が司会・進行 井芹昌信氏(JEPA理事、インプレスR&D)、パネラー、落合 早苗 氏(O2O Book Biz)、馮 富久 氏(技術評論社)、中島 由弘 氏(フリーランスエディター)の間で行われた。

この場で落合氏は、「これまで紙の出版が依拠していた流通形態、課金形態からは想像されないような、あるいは実現が難しかったようなモデルが、事業として定着し始めている」とし、「出版」(従来発想の固定概念)からの解放が2017年のトレンドになった、と主張した。

デジタル革命が実現し、その拡大を駆動しているコンセプト、「出版」からの解放の中核概念こそ、Books as a service(Baas)と考えていいだろう。

デジタル化とインターネットが社会と経済の、構造とシステムを根こそぎ変えていく時代に、私たちはいる。

「出版」からの解放、私たちが「出版」の単語から連想する従来発想の固定概念から脱出しないかぎり、時代の変化に対応できない。変化に対応できないと「出版」と「本」と「読書」がメルトダウンしてしまう。いや、メルトダウンするのは、個別の企業や業界であって、もうすでに、「出版」も「本」も「読書」も、その構造とシステムが変貌を遂げてしまっている。

変わらないために(個別の企業や業界が存続しつづける)は、変わらないといけない(従来発想の固定概念から脱出)のだ。そしてどう変わればよいのかの指針が、Books as a ervice(Baas)。

「読み放題」議論に、「サービス」視点は大事だ。

詳しくは、「「出版」からの解放 それはPubTechの始まり? ~「今年の電子出版トレンド」~【セミナー備忘録】 http://society-zero.com/chienotane/archives/7587 」にあたられたい。


■関連URL

・Books as a service サービスとしての読書 | ちえのたね|詩想舎 http://society-zero.com/chienotane/archives/1326

・「Baas(Books as a Service)」への第一歩~【セミナー備忘録】:人文社会学系出版社の将来に向けての一つ突破口 | 詩想舎の情報note https://societyzero.wordpress.com/2014/11/20/00-121/

○「もはや計画は不要になった」 MITメディアラボ・伊藤穰一氏が語る、”インターネット後の世界”と”新しい原理” | 詩想舎の情報note https://societyzero.wordpress.com/2014/08/06/00-45/
デジタル本の「読み放題」サービスが、「読書」を担保する公共インフラに近づく可能性を秘めているように、自動走行車は、「移動」を担保する公共インフラに近づく可能性を秘めている。前者はBooks as a Service(Baas)で、後者はCars as a Service(Caas)だ。


◎「読み放題モデルってどうなのよ」手元メモ

その1:注意したいこと http://society-zero.com/chienotane/archives/7720

その2:Baasあるいは「出版」からの解放 http://society-zero.com/chienotane/archives/7732

その3:読み放題ってそもそも何なのだろう http://society-zero.com/chienotane/archives/7742

その4 :電子図書館と「読み放題」 http://society-zero.com/chienotane/archives/7757