小学校の先生にこそおすすめの絵本 『ルビィのぼうけん』

『ルビィのぼうけん こんにちは!プログラミング』は4~11歳の子どもが親子で楽しめる絵本です。

ですがこの絵本は、小学校の先生方こそ読むべき本。いや文科省が全国小学校に配布してもいいような絵本なんです。ちなみに全国配布といえば、先行している英国では子どもが簡単にプログラミングできるよう作られた小さなコンピュータ、Micro:bit、このキットが11歳から12歳にあたる学年の子供と先生たち100万人に無料で配られています。送り主はBBCですが。

 

2020年から「プログラミング」導入

英国では2014年から「Computing」が小学校で教えられています。そこからはだいぶ遅れましたが日本でも2020年から「プログラミング」が導入されます。

しかしこの「プログラミング」、プログラミングという新教科が設けられるわけではないのです。あくまで既存の教科の中で、プログラミングを教育する建前。だから、国語、算数、理科、社会、すべての先生が「プログラミング」を教えなければならない、それが2020年なのです。

「プログラミングを学ぶ」のではなく、「プログラミングで学ぶ」。つまり、「プログラミングは学習目的ではなく、手段としてプログラミング的思考を使って、各教科の指導内容を学ぶ」建てつけになっています。

だからいま全国の小学校の先生方は悲鳴をあげています。

http://blog.ict-in-education-cr.jp/entry/2017/06/06/220000

ここで大事なのが、「プログラミング的思考」とは何か、ですが、それを教えてくれるのがこの絵本、『ルビィのぼうけん こんにちは! プログラミング』です(ちなみに続巻の『ルビィのぼうけん コンピューターの国のルビィ』はこの観点からはおすすめ本にははいりません)。

 

■「プログラミング的思考

この絵本にはコードもパソコンもロボットもいっさいでてきません。「プログラミング的思考」の基本的な考え方に注目して、それがどんなものなのかを自然と感じ身につけられるように設計されています。「プログラミング的思考」のベースとなるものの考え方が、普段の生活シーンとと地続きなかたちで絵本という媒体を使って表現されています。

さてその「プログラミング的思考」コンセプトのベースとなるものの考え方ですが、それは、

小さい単位に分ける:自分が意図する一連の活動を実現するために、大きな動き(事象)を解決可能な小さな動き(事象)に分割すること。
抽象化する:不必要な細部を除去する。
パターン化化する:類似の部分を特定して、別の場合でも利用できる内容にすること。いわゆる一般化。
計画立案:予測して分析する。
アルゴリズム:同様の事象に共通して利用できる明確な手順を創造すること。
振り返る:目的に応じて、必要十分な評価の観点を考え、実行したことが、意図した活動に近づいているかどうか評価すること。

といったものになります。

『ルビィのぼうけん こんにちは! プログラミング』では、たとえばこんなシーンがあります。

父親に「学校に行くからお洋服を着なさい」と言われ、パジャマの上からワンピースを着てしまいます。そのあと「『まずパジャマをぬぎなさい』なんて言われなかったわよね」と父親に反論します。

つまりもっと詳しく部分に分けて言うべき、またシークエンス(順番)に気をつけないといけない、といった「プログラミング的思考」コンセプトがさりげなく表現されているのです。

そんなルビィがいよいよ、パパからのメッセージを受け、パパが隠したという宝石探しの冒険に出かけることになります。ルビィは「何から始めればいい?」と考えだし、「手に負えない大きな問題は小さな問題が集まっている」ということで、計画を立てることから始めます。

ここでも「プログラミング的思考」コンセプトのいくつかが登場しますね。

 

■絵本の構成

絵本は全体で、

・ルビィと友だち(登場人物紹介)
・絵本(全10章)
・自分でやってみよう!(アクティビティ/全10項目)
・用語集

の四部構成。

全114ページの絵本のうち、本編は6ページから68ページまでで、69ページから109ページまでは、絵本の内容を踏まえた練習問題、「自分でやってみよう!」になっています。

練習問題でも「日常の中で、正確な指示を与える方法に意識を向けさせ、正しい順序で指示を与えること、パターンを認識すること、物事を細かく分割することの重要性の理解を促します」ということで、シーケンス(順番に並んだ命令)/小さく分ける/パターンを見つけるという3つの「プログラミング的思考」が身につくよう配慮されています。

巻末には絵本の中に出てきたアルゴリズム・関数・シーケンス・真偽値などの言葉を理解するための「大人向け」の用語集も準備されています。

どうでしょう。これなら、国語、算数、理科、社会、すべての先生が「手段としてプログラミング的思考を使って、各教科の指導内容を学ぶ」ための、授業設計ができるようになるのではないでしょうか。

全国の小学校の先生方、この絵本、お勧めです。