知のパラダイムシフト

「商業出版と個人出版の間を目指す。」

※これはインストラクショナルデザイナー、境祐司さんの「ニューズレター」の配信記事。ご本人のご了解をいただき、全文転載させていただいています。

 


「商業出版と個人出版の間を目指す。」

クリエイティブエッジ・ニュースレター
Vol.034[号外]です。

2015年4号目の配信になります。

先週、昨年一年間の取り組みをまとめた「ウェブ時代の「一人出版社」論 フリーダムパブリッシング」をリリースしました。

リリース後すぐに、本編では取り上げなかったHTML5ベースの電子出版のエピソード「HTML5と電子出版」前編・後編の2冊も追加しています。


ウェブ時代の「一人出版社」論 フリーダムパブリッシング
HTML5と電子出版(前編・後編) http://design-zero.tv/school/freedom/

さらに、もう1冊、CSSで本をデザインする試みについてまとめた「CSS3 ブックデザイン」も、フリーダムパブリッシングの追加版として準備しています。
これは少々遅れそうです。
Creative Edge School Booksの新しいランディングページも公開しました。

昨日までドメイン切れで、別のURLで公開していましたが、今は元に戻っています。Google検索から、消えてしまって焦りましたが、すぐに復帰できました。

商業出版と個人出版の間を目指す
Creative Edge School Books  http://design-zero.tv/school/booklist/

「フリーダムパブリッシング」は、何かを習得したり、役立つ情報を提供するような内容ではないため、それほど売れないと思っていましたが、想像以上に反響がありました。

学生さんからも感想メールを頂き、何度かやり取りをしたのですが、「自分の書店を持つ」ことに興味を持って頂いたようです。
「同じような仕組みをつくりたい」と相談されたので、先日、サークルイベントのゲストのような形でお話しました。

今日は、そのときのエピソードを書いてみたいと思います。

電子書籍で町興し 学生からの相談

相談の内容は以下のとおり。

・学生主導で商店街活性化のプロジェクトを計画している
・一人暮らしのお年寄りが多い
・商店街にもっと来てほしい(雑談しに来るだけでもいい)
・タブレットの貸し出しやPOD(プリント・オンデマンド)を用意したい

Kindleなどの電子出版プラットフォームを活用しない理由は「難しすぎる」ということ。

Kindleといえば、1クリックでダウンロードできて、利便性が高いサービスだと言われてますが、それはパソコンを日常的に使っている人、スマートフォンを使いこなしている人たちの評価であって、電子書籍がどういうものか知らない人にとっては、Kindleでさえ、難しいという話でした。

もっと簡単な電子書籍

学生たちのイメージは、もっと単純化したもの。

・書店ページを開くと、大きな表紙が並んでいる
・文字も大きく、十分な行間があって、読みやすいページ
・クリックするだけで、すぐに読める(つまりブラウザーで読める)
・パソコンでもスマートフォンでも文字が大きく、シンプルで読みやすい
・UI(インターフェイス)は、メニュー項目だけ。余計なボタンなどはつけない
・ヘルプページは、キャラクターを使って、わかりやすい言葉で説明
要するに、Kindleなどのストアページは、文字が小さくて、情報量が多く、インターフェイスが難解なので、お年寄りでも使えるシンプルなページを用意したいということ。

「インターフェイスが難解」という点については、例えば「メガドロップダウンメニュー」などが該当します。

メニューの項目にカーソルをあわせると、グラフィックが配置された大きなサブメニューが表示され、サブカテゴリーの項目を選ぶ仕様になっていますが、これがうまく操作できないようです。
※Amazonのサイトの場合は、左上の「カテゴリーからさがす」に採用されています。

スマートフォン向けのアプリなどは、指で操作できるように設計されていますので、パソコンのサイトよりは使いやすいのですが、文字が小さい。
※OSの設定で大きく表示できるアプリもあります。

子どもからお年寄りまで、あらゆる層の人が使うので、銀行のATMのようなイメージのページを作りたいという、というのが学生たちの考え。

 「コンテンツ中心」のデザイン

実は、海外のサイトも「コンテンツ中心」の作り方に移行していて、ワンカラムで、文字が大きく、装飾の画像が少なくなっています。

タイトルはウェブフォント、アイコンもフォント、装飾はCSSでつくるので、見栄えのための画像が減っているのです。以前は、メニューの項目まで画像で作り込んでいましたが、今はテキストです。
ウェブフォントとCSSだけでも、きれいに仕上がっています。

企業サイトの例:
Microsoftのサイトもかなりシンプルになりました。 http://www.microsoft.com/en-us/default.aspx

Appleのサイトは以前から「コンテンツ中心」でしたが、例えば最上部のグローバルメニューが(立体感のビジュアルを排除し)フラットに変わりました。 https://www.apple.com/

スマートフォンなどのモバイル環境で閲覧されることが多くなっていますので、今後も、過剰な視覚表現は抑えて、UIなども最低限の表現にとどめた「コンテンツ中心」のデザインが増えていくと思います。
海外のウェブ関連のMLでは、「ウェブサイトの”電子書籍化”」などと表現する人もいます。

電子書籍は、まさに「コンテンツ中心」で、インターフェイスは読書システム側に委ねています。本のページの中に、メニューやボタンを置きません。

広告モデルの商用サイトはなかなか難しいかもしれませんが、企業サイトなどは「コンテンツ中心」の作り方に変わっていく可能性があります。

 商品(電子書籍)の魅力を伝えるために

電子出版の作業の進め方についても、質問をもらっていたので、私が「一人出版社」を一年間やって、効果があった方法をいくつか紹介しました。

・電子書籍、1冊に1つの専用ページをつくる
・表紙は手を抜かない
・キャッチコピーをつくる

どんなに面白い本ができても、「読んでみたい」と思ってもらうには、それなりの演出が必要です。

友人や信頼できる人に「これは面白かったよ」と薦められたら、「じゃ、読んでみようかな」と、なりますが、公開されている情報だけで判断する人の方が圧倒的に多いので、個人であっても広告代理店と同じことをやらなくてはいけません。

本屋さんなら、思う存分、立ち読みして内容を吟味できますが、ネットで可能なのはチラよみ程度。本の世界観を伝えられる専用ページはどうしても必要です。
私は、電子書籍すべてにランディングページをつくりますが、販売する数週間前から公開し、情報を追加していきます。アクセス解析を見て、反応が薄い場合は、情報の内容を調整しながら、制作を進めていました。

反応が今ひとつだった本は、販売後もそれなり。
反応がよかった本は、やはり売れます。

販売するまでの数週間、数ヵ月間で、凡その見当がつきます。
本の表紙とキャッチコピーも重要です。
キャッチコピーは、ソーシャルプルーフ(著名な人の推薦文など)より、効くことがあります。心に刺さる感じのコピーにすることが重要で、説明的ではない方がよいですね。

本の表紙は、作品の「顔」ですから、公開されている情報だけで「買おうかどうか迷っている」人にとっては、重要な判断材料になります。
USのKindleダイレクトパブリッシングには、表紙をデザインするための「Cover Creator(カバークリエーター)」が提供されていますが、無料で使えるストックフォトや自動レイアウト機能など、本格的なサービスになっています。

「Cover Creator」は、本の内容は良いのに「表紙が雑で」日の目を見ない作品を減らす仕組み。今まで「表紙の不出来で損をしてきた」著者にとっては、待望のツールです。
たとえ、地域限定のストアサービスでも、公開される作品の魅力を伝える仕組みがないと、次第に利用者が減っていくと思いますので、広告代理店が企業の製品やサービスを宣伝するために、どんな工夫をしているのか調べてみてほしい、と話しました。

今は、無料で利用できるツールやサービスがあるので、個人でも十分できること。
「本をつくってストアで公開して終わり」ではもったいない。

長期戦になることを前提に進める

あとは、とにかく時間がかかる長期戦だから「速くスタートしよう」と、強調しておきました。

・シニア向けのパソコン教室のサロン化
・自分史などをテーマにした電子出版を楽しく学べる
・独自のオンライン書店で公開できるように

という計画ですから、

まず、タイトルと数行の説明文だけ決めて、オンライン書店ページで公開し、新着情報で更新していく。パソコン教室で執筆している様子も公開。
応援メッセージなども掲載して、盛り上げていく。

出来たところまでを電子書籍にして、読んでもらい、その感想をまた書店ページに掲載する。

こんな感じで、常に情報が更新され、同時に各作品の世界観も伝わっていけば、「読んでみようかな」という人が増えますので、周辺の人たちにもじわじわと広まっていきます。
そして、「発売まであと一週間です!」

「あと3日です、皆さん頑張って、最後の作業中」
「いよいよ明日発売」

「発売しました!」

ここまで盛り上げて、まったく反応がないということはあり得ません。
発売日は、ちょっとしたお祭りになるはずですから、パソコン教室で小さなイベントをやってもよいと思います。

時間をかけよう、
企画段階から情報を公開していこう、
読者になり得る人たちから意見を聞こう、
カウントダウンしよう。

「本」1冊のことですが、人に伝えるときにもストーリーが必要

販売までに、すでに「ある程度の読者がいる」という状況をつくっておくのが理想です。
要するに、一冊を丁寧につくり、育てる気持ちで売っていくという意識で進めないとうまくいかないと思っています。

商業出版と個人出版の間を目指す「一人出版社」は、
個人出版のように「自由」ですが、商業出版と同じで「売れないと継続できない」。

なんとか電子書籍が売れて継続できるかな、と確信できたのは、
「短期戦」と「長期戦」の両方を実践して、後者でうまくいったからです。
著名な人に宣伝してもらったり、媒体力のあるメディアに紹介してもらえば、ミラクルが起きるかもしれませんが、何回も期待できることではありません。
じっくり時間をかけ、情報を伝えながら、読者を増やしていく方法しかないと思っています。

ウェブ時代の「一人出版社」論 フリーダムパブリッシング http://design-zero.tv/school/freedom/

今後、ますます「電子書籍をつくる」「電子書籍を売る」ことは容易になっていくと思いますが、プロモーション、マーケティングについては、そう簡単には楽にならないでしょう。

だからこそ、チャンスがあると考えています。
境祐司
ebookcast@gmail.com
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バックナンバーの閲覧
http://bit.ly/RKGkk9


◇関連クリップ
●クリエイティブエッジ・スクール・ブックス  http://design-zero.tv/

●博報堂アイ・スタジオ、生活者の声を電子書籍化&プロモーションに活用するサービスを開始 http://markezine.jp/article/detail/22091

「一方的な企業発信ではなく、企業と生活者が一緒に活動し、新しい商品開発やリサーチの手法として共創コミュニケーションが注目されている」。そのツールに電子書籍はいかが? 「活用例としては、食品・調味料メーカーではSNSで投稿された商品の感想やレシピを書籍化して利用促進を促す、自動車メーカーではドライブスポット/所有者の声/車種の走行シーン動画など生活者の投稿と商品情報をまとめた電子カタログの配布、地方自治体では観光客の感想や、写真・動画を活用した体験や地元のお勧めスポットをまとめたローカルガイドブックの提供、家電メーカーでは商品の活用方法やプロのテクニック動画、投稿キャンペーンでの応募作品などを写真アルバムにする」などなど。

●なんのために書籍を書くのか 〜 経営者にとって書籍を書くことはビジョンを伝える手段の一つ http://kuranuki.sonicgarden.jp/2015/02/why-i-wrote-my-book.html

「書籍」を何かの支援ツール・手段と考えてはいけないのか。 

 

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