●「読み放題」があぶりだした、日本電書市場の個性と攻略ヒントと、「今そこにある危機」

A:<メディアとしての紙>から<デジタル化するメディア>へ

●Kindle読み放題"急変"、裏にあった「想定外」 http://toyokeizai.net/articles/-/135844
アマゾンの読み放題サービス・Kindle Unlimitedにはいくつかの支払いルールがある。
ひとつは「KENP」という指標に基づく支払い。KENPとは、書籍の内容をある基準に応じてページ単位に換算したもの。元の本の価格とは関係がない。だから、どんな本でも読まれたページ分しか入ってこない。
もう一つが日本ルールでの支払で、1購読につき、通常の販売と同じ額が支払われる。「1購読」とは、作品の10%以上を読者が閲覧した場合で、1人が同じものを複数回10%以上読んでも、最初のみ有効。

このうち後者が早々にクローズされた。
そこから垣間見える、日本読書市場の特殊性:「ページ消費が早い」ものが好まれる=「雑誌とコミックが強い」、つまり小説やノンフィクションは読んでられないのが、いまの日本の電子書籍読者像標準形。
「海外に学ぶべき例は多いと思う。だが、こと出版に関していえば、日本は他国と違いすぎる。そして、その違いに合わせたビジネスの姿が、(アンリミテッドの「1購読」支払早期終了で)見えてきた」。

●鈴木みそは「アマゾン読み放題」で儲かったのか!? 金額発表! http://www.misokichi.com/chinge/2016/09/post-295.html
「儲かった」が結論。で、その理由が2点。
SNSによる告知効果:「「アマゾンやめる」ツイートをきっかけにして、話題になったおかげか、4日目から青いグラフがポンと伸びまして、5日目に15万ページになりました。
1ページあたり0.5円なので、日に7万円ちょっと売れてます。すごいね」。
作品の力が露見してしまうのがアンリミテッド、という総括:「Unlimitedで一番大事なのは、次の頁をめくらせる力です。次の単行本を読んでみよう、と思わせる作品であること。
実は販売よりもレンタルの方が、作品の真価を問われるのかもしれない」。

●アマゾンと楽天、「読み放題」の勢いは続くか http://toyokeizai.net/articles/-/135887
「出版各社の『キンドル・アンリミテッド』向けラインナップがかなり充実していたこともあって、消費者の食いつきが想定を超えたのだろう。以前は読み放題サービスへのコンテンツ提供に消極的な出版社が多かったが、紙の本の市場縮小が続く中で、電子書籍に活路を求める傾向が強まっている」。

楽天の読み放題サービスはECとの連携を視野に入れている。それが雑誌だけの「読み放題」にした理由か。
「たとえば、ファッション雑誌のバッグの紹介記事をタップすると、ECサイト「楽天市場」の購入ページに移動するといった電子雑誌とECとを紐付けたサービスをおよそ1年以内に開始する方針だ」。

◯マンガの主戦場は紙からアプリへ。作品性だけが求められる時代は終わった? http://hbol.jp/105464
現在のマンガアプリのシェア競争は書店系、広告系、IT系、出版社系の四つ巴になっているが、その戦略は全く異なる。
「書店系は電子書籍の購入アプリとしてスタートしており、消費者の囲い込みが目的。広告系は過去のマンガを無料公開し、広告収入を得るモデルだった。IT系の目的は二次利用を念頭に置いたコンテンツを育てること。既存のキャラやコンテンツを利用すると多額のロイヤリティが発生するため、自前のマンガアプリ上でヒット作をつくり、ゲームや映画などに発展させようという計画だった」。

ところが、「量」が「質」の変化を生む次の段階へはいった。
「他業種のマンガアプリが1000万ダウンロードされるような状況になると、全盛期といわれた90年代半ばの少年ジャンプすら発行部数は650万部ですから、アプリやWebでマンガを無料公開して単行本で回収した方が効率がよい」こととなった。

成熟期を迎えたマンガ産業には、従来型のランキング主義に収まらないポテンシャルがある。たとえば子供たちは作品を読むことよりも、『comico』がもつコミュニケーションのハブとしての機能を重視している。
それ以外にも、「エリアマネジメントと組み合わせたり、教育と組み合わせたりすることも考えられる」。

◯少年ジャンプ副編集長に聞く「漫画アプリ」の手ごたえ--デジタル作家の仕事場にも潜入 http://japan.cnet.com/news/business/35087286/3/
「少年ジャンプ本誌の連載陣は、紙とペンとインクという、昔ながらの方法で漫画を執筆している人が多い。それに対し、連載陣の平均年齢が20代半ばと若い少年ジャンプ+では、すでに約3分の2の作家が、何かしらのデジタルツールを導入して執筆している」。

このボーンデジタルの潮流が、新しいマンガの「見せ方」を実現している。
たとえば、近未来エロティックサスペンス『終末のハーレム』は、「内容の過激さから、時間やデバイスによって段階的に“ボカし”が入るなど、見せ方が変わる」。

終末のハーレム | 少年ジャンプ+ http://plus.shonenjump.com/rensai_detail.html?item_cd=SHSA_JP01PLUS00004750_57

●週刊少年ジャンプの発行部数と主要漫画の連載期間について。 http://prehyou2015.hatenablog.com/entry/jump
90年代断層は深い。

● マンガのデジタル化と出版流通の運命 (1) http://www.ebook2forum.com/members/2016/09/growth-of-digital-manga-and-the-fate-of-book-distribution-1/
コミックのデジタル比率は30%に近い、「少なくとも年25%もの増加が、書店でのマンガ売上(あるいは書店そのもの)の減少と結びついている可能性は強い」。
一方版元にとって、「デジタルの利益率は紙とは比較にならないくらい大きいので、この基幹商品のデジタル化は、出版社にとっては貴重な収益源となっているはず」。
ただし、「紙の流通は雑誌+マンガで支えられてきており」、マンガ以外の一般書は、マンガ無き出版市場で果たして、流通インフラを維持し、生き残って行けるだろうか。「マンガがデジタルに移行した後で、書籍は書店の家賃を払えるだろうか」。

●書店店頭に足を運んで試し読みできる、「LINEマンガ試し読みキャンペーンhttp://internet.watch.impress.co.jp/docs/news/1020581.html
LINE株式会社と株式会社トーハンが、ビーコンの仕組みを活用して、Android/iOS用の「LINEマンガ」アプリでマンガの試し読み情報を無料で提供する「LINEマンガ試し読みキャンペーン」を、全国150の書店店頭ではじめた。

試し読みを終えるとポップアップが表示されるので、書店店員に掲示するると、オリジナルイラストカードを入手できる。

●なぜ日本では「マンガ・アニメ的なるもの」が発達したのだろうか-日本文化論- 高畑勲 http://www.ghibli-museum.jp/docs/zaidannnenpou2015-2016.pdf
ジブリ美術館に関する「公益財団法人徳間記念アニメーション文化財団年報 2015-2016」のP43/58~P54/58に所収。
日本では「本質」とか「永遠」を探求するよりも、好奇心によって「現象」を逐一描出し、それを享受するのが大好き。「永遠」には関心を示さない、災害列島の庶民的無常観が背景にある、との見立て。また音声言語と視覚言語を重層させる言語体系が、「絵か言葉か」ではなく「絵も言葉も」の文化を、後押しした。
それで日本では平安の昔から連綿と、おびただしい数の「マンガ・アニメ的なるもの」が作られてきた。「マンガ・アニメ的なるもの」とは、「絵と言葉を使って、時間とともに、ありありと物語を語る芸術」のこと。
それが史上、三度のピークを経験した。平安末期と江戸末期とそして戦後。

●これを見るとディズニーアニメの基本原則が分かってしまう(GIFアニメ)  http://fundo.jp/1529
高畑勲が言う、日本的「巻き込み型」アニメの対極にあるディズニー・アニメ。その基本形を表現したGIF画像。
「線によって人物を捉える絵と、陰影を付けて立体感を与えた絵は、「表象」のあり方に関し、根本的に異なると私は考えている。前者が「ボクはホンモノではないが、その裏側にあるホンモノを想像してくださいね」と慎ましく言うのに対し、後者は、「ほら、ボクはここに、画面上に存在していますよ。すなわちボク自身がホンモノなのですよ」と自己を主張する(高畑勲、「巻き込み」型アニメを憂う http://d.hatena.ne.jp/kingfish/20140505 )」。

●日本過酷すぎぃ! フランスのクリエイターが語る高待遇な海外アニメ業http://nlab.itmedia.co.jp/nl/articles/1608/30/news086.html
フランスと日本の両国で活躍するクリエイター吉田クリストフ氏が語る、日本のアニメーターはなぜ待遇が優れないのか、日本と世界のアニメの傾向の違い。
フランスでもアニメータのほとんどはフリーランサーだ、アニメの場合1話ごとで契約したりする。しかし、「エンターテインメント領域で働く人用の特別な社会保障制度があって、健康保険や年金もあるし、年に1回「Conges Spectacles」(エンターテインメント産業界の休暇)という有給休暇が1カ月分もらえる。
「ここからここまで休みを取ります」と言うと1カ月分の給料をボンと渡される。前年にあまり働いてなければ少なくなってしまうけど。」

「欧米で3Dが主流になっている理由は?
吉田 大きな理由は、自分の国だけで制作できること。昔はフランスも中国や韓国に外注していたけど、3Dになってからは国内で全てまわるようになってコストが大きく削減された」。
「(海外の)スポンサーは、アニメで感情を描いたり、悲しい場面で泣いたりするのを「子どもにトラウマを与えてしまう」と言う」、また「日本のように感情を表現するための間を入れたりしないし、登場人物が泣いたら視聴者も感情移入して泣く、とか、キャラクターに愛着を持つように導かれ、心を揺さぶられるようなことがない」。

●デザイナーは残酷な職業 http://www.fashionsnap.com/the-posts/2016-08-29/designer-skills/
「これはかなり残酷だと感じた。今までデザイナーとしてコツコツと身につけてつたスキルが時代の変化に合わなくなり、経験の少ない若手の方が適切なスキルを身につけている」。

●経済産業省、アニメ・マンガ・ゲーム教育機関の運営基準公開 外国人留学生の受け入れを念頭 http://animationbusiness.info/archives/187
日本のアニメ、マンガ、ゲームの人気が世界的に高いことから、近年は海外から日本にやってきて、学ぶ者が増えている。
「しかし、各種学校でないことから長期間、日本に滞在するビザを受けることが困難なケースが多い。今回の「運営に関する基準」による審査は、そうした海外からの留学の道を広げる」。