一人出版社がAIを導入してやろうとしていること[2]

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ゆっくりと静かに進行する。私たちの身のまわりにあるモノが賢くなっていく世界こそ、まさにAIが遍在する世界/一人出版社がAIを導入してやろうとしていること[2]

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シンクゼロマガジンニュースレター Vol.01
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前回の記事:
時価総額69兆円のGoogleが、私たちに無料でAIサービスを提供しても何ら不思議はない/一人出版社がAIを導入してやろうとしていること[1]
http://blog.livedoor.jp/thinkzero/archives/7164180.html

一人出版社がAIを導入してやろうとしていること[2]
ゆっくりと静かに進行する。私たちの身のまわりにあるモノが賢くなっていく世界こそ、まさにAIが遍在する世界

私はいま「電子出版」の仕事をしている。一人で企画から取材、執筆、編集、販売、マーケティングまでこなす、小さなインディペンデントだ。自分の考える次世代の電子出版を実現するため、既存の「本」および「電子書籍」にはこだわらず、自由にやっている。一人でこなすために、今まで企画と取材活動以外は可能なかぎり自動化を進めてきたが、AIはその最終仕上げで欠くことのできない技術になりそうだ。

AI、ビッグデータ、IoT、どれも聞き飽きたバズワードなので、ネットに張り付いている人ほど、うんざりしていると思う。もっと「AI、AIって騒ぎすぎ!」と、杭を打つ記事が増えてよいのだが、AIは60年の歴史があって、とても憶測で語れるものではない。やはり、記事一つ書くにも十分な知識が必要なのだ。
もし、取材活動をせず、資料をかき集め、創造力だけでコンテンツを作成しようとしていたら、AIを導入しようなどと思わなかっただろう。SF世界の産物としか捉えられないし、今すぐ必要なテクノロジーではないからだ。AIがいくらブームになろうと、興味のないものは目に入らない。制作するコンテンツのテーマがロボティクスだから、AIのことも調べておこう、程度のことでしかない。

ところが、すでに稼働しているAIシステムを実際に使わせてもらったり、プロジェクトのロードマップを見せてもらうなど、AIに関する世界中の情報が得られるようになってくると、3年後、5年後の世界を自分なりにイメージできるようになってきた。特に日本は、オリンピック開催の2020年をゴールにしているプロジェクトが多いので、実現させたいことが明確になっている。ブームが収束しても、飛躍的に進歩するな、と感じている。

人間の知能と同等の機械(ストロングAI)については、まだSF世界の域から出ていないが、パソコンよりは賢く知的な機械(ウィークAI)はもう現実のテクノロジーだ。
4月7日と8日、ホテルニューオータニで「新経済サミット 2016」が開催され、「Android の父」として知られるアンディ・ルービンが登壇。「モバイルの次に来る「波」は間違いなくAI(人工知能)だ」と語り、大型スクリーンにプラットフォームサイクルの図を示した。さらに同月29日には、GoogleのCEOであるスンダー・ピチャイがファウンダーズ・レターで「われわれは、モバイルファーストからAIファーストへとシフトしていく」と宣言、「デバイスという概念自体が薄れていく」と綴り、AIが遍在する時代がくることを示唆した。

AIが遍在する時代というのは、取材活動で感じていたことだった。あまり良い例えではないが、1978年に公開された映画「ボディ・スナッチャー(Invasion of the Body Snatchers)」の世界観に近いものを感じる。この作品は人間が未知の生命体に体を乗っ取られていくストーリーだが、静かにゆっくりと進んでいくところが作品の肝だと言える。

私たちの身のまわりにあるモノが賢くなっていく世界こそ、まさにAIが遍在する世界であり、Amazon EchoやGoogle Homeなどのスマートホームはその初歩的なプロダクトである。人々を驚かせることなく、静かに進行していくと思っている。いま起こっていること一つひとつ丹念に見ていかないと全体像を俯瞰することはできないだろう。

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